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とりあえず、僕らは学園に向かうこととした。
勉学に勤しむ精神状態ではなかったが、さすがに休むのもいけないので行くこととする。昨日なんてさぼったりしてしまったし。
時間はあまりないが、幸いながら小走りで行けば間に合いそうだ。
部屋に戻り簡単に必要なものを用意し、寮から出て走ろうとしたところで都和に手を掴まれた。
「えっと……急いでるんだけど」
恋人繋ぎ。
いやいや、さすがに遅刻する。
「手を繋いで一緒にいかないのか?」
何を期待しているんだこの乙女は。
僕はわざとらしく乱暴に手を振る。が、強く手を掴まれていたので離れなかった。
「都和さん?」
「あんなに昨日は熱く求めてきたのになあ!」
「ちょっと!?」
さすがに時間も時間なので誰もいないがいきなりの大声でかなり焦った。
結局、押しの強い都和に負けて途中まで手を繋ぐ羽目になるのだった。
流される性格を早く治さないと。
そう、僕は何回目になるかわからない決意をするのだった。
頭の中に知識は入らなかったが色々と思案出来た午前中。
学生としては駄目だが混乱も晴れて現状維持を目指すというあたりさわりのない解答を胸に昼休みになった。
お昼はどうしようかと考えていると、小夜が弁当箱を持って教室に入ってきたのを確認した。そういえば作っていたと言っていたっけ。
家に置いてけぼりにしていたがよく帰って来れたものだと感心しつつ、謝罪を先にするべきかと考えていると。
僕の後ろの座席に座るクラスメイトに小夜は手を掴まれて連れて行かれた。
「なんでさ……」
なぜだか全然わからない。
休み時間になると本を読んだり、イラストを書いたり、携帯電話を触っているのはなんとなく知っている。しかし、僕よりもクラスメイトと話していないのではないかと思うくらい声を聞いていない子だ。
そんな悪く言えば地味な子と小夜になんの接点があるのだろうか。
「見てしまったし……」
仕方なく小夜を追う。
周りの子達にも小夜は従姉妹だなんて嘘を吐いているので、僕が行ってくるなんて言うと笑顔で送ってくれるのだった。
純粋なお嬢様。
うん、こういうところはありがたい。
クラスを飛び出し、僕は小夜とクラスメイトを追う。だが、上の階に行ったところで見失った。