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「…………………………え、どういうこと?」
時間を置いて考えてもさすがに理解出来なかったので聞き返してしまった。
しかし、黒伽羅はそれ以上何も言わなかった。
替わりに目の色が変わっていた。
オッドアイ。
ゆっくりと頭の中で五秒ルールがチラついた。
黒伽羅の方に何かいるということだろうか。
そう推測し、伽羅の方を見る。
すると悪戯っぽく笑われた。
「まあ、そういうこと。私の方で終わらせるからくれぐれもあと一週間は帰って来ないように。終わらせておくからそのあとで一緒になりましょう?」
「ちょっとまっ!」
そういって白伽羅は僕を乱暴に突きとばした。
頭の中が整理できなかったが。
「あ、周っ!!」
寮に戻って来てしまった。
都和が僕に近づいてくる。心配そうな、というよりは憔悴した顔をしている。
「……都和?」
気付くと僕はエントランスの床に倒れていた。毛先の長い絨毯のせいか一瞬、マットだと思ってしまった。
起き上がろうとして、都和に阻まれる。
「勝手に出て行くのは……なしだ!」
ぎゅーっと抱きしめられる。
痛い。
勝手に出て行ったのは悪いけれどもこんなに混乱させてしまうものだったのだろうか。
とりあえず、伽羅のことを考える前に都和をなんとかしないと絞め殺されそうだ。
力なく僕は都和の腕を掴むと都和はわかってくれたようで。
「ああー……胸が触りたい?」
わかってもらえていなかった。
なんとか宥めて説得して、今の今まで何をしていたかを抱きしめながら懇切丁寧に説明したところで都和は納得してくれた。
「いや、だからって勝手にいなくなるのはダメだ。昨日あんなことがあったあとだから余計に……」
顔を朱に染められた。
僕は思いだす前に首を乱暴に横に振り、えっちぃことが頭に過ることを阻止した。
「さて」
どうするか。
一週間。
特に僕の出る幕はないっぽい。
学園に入れられた訳も、女にされたわけもわからないがとにかくあと一週間。何もせずとも帰れるらしい。
「……簡単に行くだろうか」
中途半端に現状を理解しても謎が残るばかりである。