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僕は考える。
果たして伽羅がどう対応するのか。
敵からとはどういうことだろうか。
争いなく全てが終わればいいなんて呑気なことを考えていると、ふと後ろから抱きつかれた。
「き、伽羅?」
「あーまねっ!」
胸が背中に当たる。
小夜じゃないけれどもさすがに天想代力を感じるし、声色でわかるがこれはあのときトイレであった伽羅だ。
僕は乱暴に背中から引き剥がす。しかし、それを意に介さず伽羅は僕に抱きついてくる。
「くっ!」
「んふー、これでもかなり我慢してるんだからね?」
そういって、唇を当ててくる。
頬に。
「そんなむず痒そうに唇を動かしちゃダーメ」
あどけなく笑われた。
「か、からかわないで! 聞きたいことは沢山あるんだから」
「良いよ。質問するたびにキスしますが」
「いや、ちょっと待って。今、シリアスに聞こうとしてるんだよ?」
「これが嘘をつく瞳に見えますか? 早く聞いてみて下さい」
目は嘘をついていなかった。
だから質問にはしなかった。
「じゃあ、確認。伽羅は僕の妹として生まれ変わった」
「ちょっと違う。咲哉さんが子どもを産めなかったのをわざわざ呪いを移してまで産ませたのが今の私です。結果として産まれたものの、私がいないと身体を壊しちゃうから離れられなかったわけ」
さっきの伽羅は腹違いの妹としての人格なのか。
そう考えていると伽羅は僕の頬にまたキスをしてくる。
むず痒くはないけれども、やはり物足りないと思う辺り毒されている。
ふと気付いてしまった。
「あれ、それじゃあなんで僕は記憶を失ってまで女にされて女子高になんか行く羽目になったの?」
「私から言うね……」
ふと声をした方を見ると、もう一人伽羅が居た。
貼ってあった紙から言えば彼女は敵なんだろうか。
って、ノックしてないんだけれどもどちらも現れてしまうのか。
第一印象は黒伽羅だ。
僕を抱きしめている伽羅は白紫の髪をしており、離れた伽羅は黒紫の髪をしている。どちらもポニーテイルなのはなぜだろうか。
黒紫の伽羅の方は前髪が垂れているから目元がはっきり見えにくいため雰囲気は暗く見える。
黒伽羅は僕の反応を見ずに話を続ける。
「簡単に言うと、来週で期限が来ちゃうの。身体が出来上がるからかな。伽羅ちゃんは離れて良くなるの……」
「だからって……それは僕が苦しむ理由にならないでしょうが」
「……えっと、ごめんなさい。期限にはもう一つあって……私もあるの」




