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「そんな馬鹿な……」
前提が変わってしまう。
あんな知ってそうな顔でまさかの部外者でもあるまい。
「小夜の天想代力を測る精度は?」
「目視ですと怪しいですが、接触ではほぼ百です」
少しだけ頭を抱える。小夜が嘘を吐くとも思えないが。
名前も伽羅なんだから黒幕であって欲しいのだが。
「間違える確率は?」
「そうですね……例えば、天想代力が空に近ければさすがに難しいですけど」
「……空なんてありえないよね」
「そうですね。補給欲も高まって行動に制限来ますし」
空でもないのに補給欲だらけの僕はどうすればいいのだろうか。
伽羅に関しては話をしてみるしかないか。
ええい、出たとこ勝負だ。僕はリビングに行こうと考える。
「えっと、ちょっと退いてくれる?」
くっつかれ過ぎて立ちにくいので言ってみるが首を横に振られた。
「呼びに来るまでこのまま!」
そういって僕の胸に顔を埋める。
別に恥ずかしくはないけれども呼びに来たときにこの姿だと伽羅に見られたら恥ずかしい。
ある程度と考えていると。
「あの、周さん。取引しませんか? 私の天想代力なら共有して秘密を引っ張れますよ?」
なにやら怪しい取引を提案された。
「記憶を覗いているときは気付かれはしませんがさすがにゼロ距離じゃないとダメなので協力は必要ですが……一気に色々と解決しますよ?」
確かに色々と終わりそうだけど。
「僕に何をさせるつもり?」
「え、それは……こう折角周さんの家で部屋にいるんですからお姫様だっこしてベッドに横にして、その後で上に乗ってくれれば……」
難易度は高かった。
感情は再現で落ち着いているが、先程楔と玖乃としたことの余韻が僕を引っ張り結局は感情は不安定気味である。
「……ちょっと待って」
さすがに小夜相手でも暴走しそうだ。
そんな風に思っていると、小夜の方が我慢できなかったのか僕の頬にキスをしてきた。
「んんぅ……くぅ」
悶える僕。天想代力が半分あってもあまり我慢できないことに絶望しつつ、小夜を見る。
「わりと周さんったらガード弱くなりましたね」
嬉しそうに悪戯な表情を浮かべられるのだった。