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「その前に……」
さすがにスカート姿で会いに行くのも何なので自分の部屋に軌道を修正する。
部屋の中は青を基調として小奇麗に見えるが、物が多いためか客観的に見ても窮屈に見えた。
勿論片づけて行ったのだが勉強机の上や本棚に入りきらなかった前の高校の教科書や漫画、雑誌が所せましと置いてある。
「なぜ美少女フィギュアが……」
さっきの短い間に玖乃が置いたのだろうか。しかもケース付きで二体。安物ではなさそうだが。
いや、それも気になったが一番気になったのはベッドが膨らんでいることだったりする。
「……ちらり」
布団を捲ると小夜が眠っていた。
思わず絶句。
怖いわ。
「中学の間に小夜に会ってたら楔と友達になれなかっただろうな……」
束縛されていたと思う。
そういえば大学に入るまでは我慢するつもりだなんて言ってたっけ。
なぜなのかは置いといてともかく、僕は小夜を揺り動かし起こす。
隣の部屋かリビングにいるであろう伽羅に気付かれないように声量は抑え気味に。
「さー……よっ!?」
さらに絶句。
小夜よりも下の方に伽羅も寝てた。
混乱する僕の頭とは別に身体は冷静に動き、布団を元通りにした。
「はぁはぁ……」
深呼吸一つ。
自分を落ちつかせて五分は経っただろうか。どうしようか考えている間に二人が同時に目覚めたようだ。
「んー、周さ……ひぃにゃ!? だ、だれですか!!」
「……んむ」
「ひぃああああ……っ!?」
何が起きているのだろうか。
布団がバタバタ動いているが僕はこのままここから去りたい気持ちでいっぱいになった。
「うぁああああ!!」
ベッドから飛び降りてくる小夜をキャッチする。
あのままだったら頭から落ちていただろう。
甘いな。と思いながら僕はベッドからこちらを見る伽羅に話しかける。
「おはよう、伽羅」
「周さーん!!」
クールに決めたかったのに僕の胸に頭を擦り寄せてくる小夜のせいで台無しだった。
「小夜……ちょっと僕は伽羅に話があるから静かにしててくれる?」
「でも、でも、キスされそうになって!!」
されたかと思っていたがなんとか死守したらしい。
いや、そんなことは良い。
小夜にとって問題かもしれないが僕にとって大事なのはそこではないのだ。