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「ところで周。顔が赤いが大丈夫か?」

 いやらしい表情をされた。

 僕は再現性を用いて表情を元に戻す。

「おっと、ブラフに引っ掛かるとはまだまだだな」

「……玖乃は結局僕の敵なの?」

 わりと殺意が芽生えかけた。

 拳を前に突きだす。

 振りであったが、わかっているのかするりとそれを抜けて僕に抱きつく。

「……あまりに一連の動き過ぎて何も言えなかったよ」

「そりゃ、省略するには無駄を減らす方が効率良いからな。それと敵ではないが味方ではないだろう?」

「得意げにそんなことを言う割にはセクハラするの……?」

 僕の背中に手を回してくる。

 いやらしい。

 だが振りほどこうにも玖乃の方が力が上なのか振りほどけなかった。

「色々と言いたいことはあるけど小夜が待ってるし行くか?」

「そういえば……忘れていたつもりはないけれども、小夜を置いてきたの?」

「周の家の前に」

「……なんで僕が行くのか知ってるよね?」

 あくまで情報収集。場合により奇襲だ。

 それを一切、伝えていない。

 たらりと汗が流れる。

「悪いけどすぐに連れてってもらえる? この量の天想代力って抵抗してしまわない?」

「量的には抵抗されるが、大事なのは周が協力するかどうかだ」

 さっき失敗したことなんてどこ吹く風で、玖乃は僕に目を瞑るように言う。

 僕は瞑る前に確認する。

「……玖乃、キスしないよね?」

「おいおい、お約束を潰すなよ」

 するつもりだったのだろうか。

 玖乃は不満げな顔をしつつ、僕を抱き抱える。

 その勢いにより顔に近づいたせいで反射的に唇を前に出してしまった。

 触れる程度。

 それだけならすぐに理性で離れられたのだが、玖乃から攻められると逃げられなくなってしまった。

 触れあう唇。

 互いに鼻息を感じながら。

 理性が弱いっと思いつつも抗えきれず僕は流されてしまった。

「ぷぅ……ぁ!?」

 だが、舌を入れられそうになったので派手に突きとばしてしまった。

「っち、口だけで新しい世界に導いてやろうと思ったのになあ」

 そういって舌をちろりと見せる。

 危険だと僕の本能が告げていた。

「これで何人とキスしてんだか」

「不可抗力だから不可抗力だから……」

「現実は見えてるか?」

 なぜ僕の天想代力の回復はキスなんだ!

 自己嫌悪していると何かに気付く。

「あれ……」

 床はいつの間にか毛の長い絨毯ではなく、コンクリートになっていた。

 そう、家の前だった。

「したかったらまた呼んでくれよな」

 そういって目の前から消えた。

 勝手過ぎる。

 吐き捨てたい言葉があったが飲み込む羽目になった。

「さてと」

 決心したとはいえ家を前にして決意は鈍る。ぐるりと家を一周しながら小夜を探したがやはり見つからない。

 少しだけ考える。

「……ええい!」

 僕の家なんだ。

 一週間前は住んでいたんだ。

 恐れることはない。

 僕は家に入った。

 だがこっそりと入ることにした。

 玄関口に靴を脱ぎ捨て、忍び足。

 生活音がリビングの方から聞こえるのでおそらく咲哉さくや義母さんが料理をしているのだろう。

 僕は構わず伽羅の部屋がある二階を目指した。

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