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僕はそんな干渉を置いておいて、玖乃に助けを請う。
「玖乃、助けて!」
「んー」
「悩むの!?」
悩む案件なのか。
「若者の行く末を見届けたい」
しかも助けてくれないらしい。
干渉はそれに対して不満ありそうではあったが、無視して僕を見る。
「集中しなさい」
手を這わせてくる。
首元をすり抜け胸元を通り下腹部へ。
「ふふ、柔らかい。それでも確かに腹筋はあるようね」
「退きなさい!」
暴れる僕。
微動だにしない。
嫌な汗が垂れる。
そんなことにはお構いなく手は下腹部からスカートの下に潜り込もうとしてくる。
「言ったでしょう。次はここだって。半端に手を出した貴方が悪いのよ。いえ、美味しそうな貴方が悪いのよ」
「……本気?」
「冗談だとでも?」
僕はちらりと玖乃を見る。
「……っ!?」
笑顔で手を振っていやがった。
するとゆっくりと魔の手は僕の下半身へ。
「ちょっ、まっ……そんなとこ触らないで! 動くな!!」
大声で騒ぐと干渉はなぜか僕の上から落ちた。
それでもソファーの上から落ちるわずかな時間で受身は取っているようではあったが。
いや、そんなことよりも逃げなければ。
僕は口を使って手の拘束を外し、手を使い足の拘束を外した。
「何をした」
睨まれた。
すごまれても僕にはわからない。
干渉は玖乃を見る。僕もつられて見るが首を横に振っていた。
「なんだしないのか」
残念そうな玖乃。あとで刺してやると心の中で誓う。
僕は直ぐ様態勢を整える。
能力を出し惜しみすることなく服の乱れを正し、ナイフを構える。
「ん? そんなので戦うの?」
場外から意外な声が飛ぶ。
「長いのにしろって?」
「再現性ってもっとえげつないのに」
えげつない使い方とはなんだろうか。
「お話はそこまで」
干渉は走り飛ぶ。
「ふー……っ!」
息を吐き、僕は相手の攻撃に合わせる。
干渉の手刀一閃。
僕はそれをなんとか払う。
受けきれない痛みはすぐに治す。
「無駄なあがきなのよ!」
苛立っているのがわかる。
こういうときは勝機なのだが勝てる気はあまりしない。