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僕たちは互いに口角を上げた。
干渉が地面を蹴るのを見て僕は構える。
ナイフを放つよりも先に僕は空間を移動する。
先程いた場所へと自身を再現する。
「くっ!?」
「何度も同じように逃げないで下さいよ」
目の前に現れた干渉の攻撃を後ろに転ぶようにして辛うじて避ける。
避け方は無様でもすぐに姿勢を再現することにより隙はかなり減る。
「思考を読んでいるわけではなさそうだけど?」
「もしかすると読んでいるかも知れませんよ?」
いやらしいと思いながらも僕は瞬間移動をすることを躊躇うことになる。
瞬間移動後にクロスボウを合わせられると避けられる気がしないのだ。
干渉は再び地面を蹴った。
僕はナイフを構えて迎撃することになる。
右手の大振りの攻撃をしゃがむ様にし、かわす。僕がしゃがんだのを見て彼女は足を出して来たので玉砕覚悟でナイフを突き立てる。
だが、それで減速することはなくそのまま足を振り切られて僕は蹴り飛ばされた。
蹴り自体に痛みはないのだが、背中に受ける地面の衝撃は呼吸が出来ない程だ。
咄嗟に回復をしようとして僕は干渉から意識を離してしまった。
「チェックメイト」
仰向け状態の僕の左肩を干渉は踏みながら僕の頭にクロスボウを構える。
「強くはなりましたね」
にこりと笑う。
それは師匠が弟子に向ける笑みなんかではなく、肉食獣が獲物をしとめた笑みに似ている。
「動かないように。誤射はしたくありませんから」
さすがに動けず、両手と両足を特殊な糸で縛るのを黙って見ているしか出来なかった。
その後お姫様だっこで抱えられた僕は、そのまま玄関先のソファーに横にさせられる。
「それでは頂きます」
「どういう意味で!?」
そのまま何も言わずに僕の上に乗りながら鼻歌混じりに僕の上着のボタンを外そうとする。
「やっ!?」
「勝者の特権ですね」
胸もぺたぺた触られる。
「ちょっと!?」
「あーるいーしー」
「……」
携帯をこちらに向ける玖乃がいた。
まさか撮っているとでも言うのか?
「食事の邪魔をしないで下さい」
不服そうな干渉。