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「配慮はいりません。それに一緒の部屋なのは他の部屋の掃除が出来ていないからだと聞いています」
「確かに、部屋の数は限られております。ですが少し手狭でよろしいのであれば客室を使っても構いませんよ? それでも気になるようであれば楔や他のハウスキーパーに言って早急に一室掃除して頂きますが」
もう都和を守る必要はないのならば、一人部屋なのはかなり精神的に安らぎそうだが。いやいや、そもそも僕はここに長居するつもりはないのだが。
「……良いでしょう。一応は掃除をさせておきます。その後お聞きするのでそのつもりで考えて置いて下さい」
僕が考え事をしていると一方的に話を打ちきっていなくなってしまった。
昨日の話をしたかったのに。
残ったのは僕と小夜。
「都和となにかありました?」
鋭い。いや、わかってしまうか。
ある程度の情報を与えて逆に聞かれないように試みた。
「上手くキスが出来なかっただけだよ」
顔を赤くする小夜。効果はばつぐんのようだ。
「ちょっ……と! 天想代力がないのなら、僕に頼ってくれれば!」
「昨日、あんなことがあって気まずかったのに?」
「うぐっ……」
誤魔化し完了。我ながら中々の悪女な気がする。
いや、男だけど。
「うぅぅ……」
唸りながら近づいてくる小夜。
それは遠慮がなく、ソファーに一緒に座ることになる。
距離はゼロ距離。
僕に身体を預け切っている。
「な、なに?」
「今日は一緒に寝ますよね? 寝てくれますよね?」
都和が発狂しそうだと軽く思いつつ、僕は曖昧に返事をする。
「約束」
しかし、引かない小夜。
唇を尖らせる。
それどころか、僕の手を取り服の中に手招きしようとする。
「朝から何をさせようとしているの?」
「朝だからできないなんて、調子のいい言い訳ですよ!」
かなり切れていた。
なにかしら察しているのかもしれない。
僕からぎゅーっと強く抱きしめてあげると何も言わなくなった。
やはり小夜は愛に飢えているのかもしれない。
ヤンデレ気質だなあ。なんて他人事のように考える。