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 刀を一瞥し、僕は目を見て軽く頭を下げ挨拶した。

「初めまして、七海周です」

「はい、よろしくお願いします」

 そういって、笑った。無垢な笑みが少し眩しい。

 だからこそ、彼女の次の言葉で僕は混乱した。

「ところで周さん。私を愛奴あいどにしませんか?」

「え、あっ…………嫌です」

 混乱したが、すぐさま僕は否定出来た。

 愛奴って、さらっと水を飲むように言うが簡単に言えば性的な御主人様ってことなんだが。例えこちらが主従でも嫌だ。

 えろいのは怖い。苦手だ。

 性的なものはなぜか忌避してしまう。理由はよくわからないけれど、逃げてしまう。

 性欲はあるはずなんだが積極的になれない。

 まるで呪いのようだ。

「どうしてそんなことを僕に?」

 愛奴という言葉は使いたくなかった。

「私は下に行きたいんです。誰かの下で命令をどうしようもなく聞いていたいんです。今まで必死で我慢していたのですが……」

 やはりアイドルとかの聞き誤りではなさそうだ。

 むしろこの状況がどうにかなるのならプロデューサーと呼ばれても良い。

 どうして僕の周りの女の子はこんなにも僕のパーソナルスペースを光速で突き破ってくる子が多いのだろうか。

「初対面なのに……」

「問題いち。私は貴方の初対面でしょうか?」

「初対面です。さすがにそんな特徴のある髪型している子なら覚えているって」

「ぶぶー。違います」

 先程からずっと同じ笑顔で、底が見えない。詰め将棋のようにゆっくりと追い詰められている気分だ。

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