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「……周」
呆れられた上に千華の返事がなかった。
あわあわしていると、都和は大胆不敵に扉を開ける。
連れられて一緒に廊下に出るも誰もいなかった。
ちょっと千華さーん。
すぐに僕は大声を出す用意をしたが、今度は都和に脇腹を撫でられてしまい空気が漏れて失敗した。
「一緒にいるのが嫌か?」
なんて、正面から見据えられると僕は何も言えなくなる。
いざとなったら再現性を使い意識を手放す必要があるなあ……なんて自虐的に考えていると。
「さてと」
ひょいっと抱えられて、ベッドに座らせられると僕の膝の上に都和の頭が乗った。
「都和の……悩みはなくなったの?」
使いこなせるのであれば身体や精神が乗っ取られることも、数の概念が身体に入ってくることもないだろう。
「いんや」
だが、都和はやんわりと否定した。
軽く頭を撫でてあげると嬉しそうに目を細める。
「その割には悩みなさそうだけど」
「周がいるからな」
僕は少し苦笑い。
「周はずっといるよな?」
「そんなこと言われても……」
都和は僕に手を伸ばす。軽く僕が下を向くとそのまま伸ばした手が僕の首に周り急激に顔が近づいて。
「んんっ……」
唇が当たる。
咄嗟だったのでそれ以上はなく、離れる。
「もっとしたかったか?」
意地悪な表情をされた。
「そうだけど?」
なんていったら、頬が赤くなった。
都和の顔が直視出来なくなったので僕は顔を逸らす。
前言撤回したくなった。
「ごめん、ちょっと離れて良い?」
都和に確認。
「ダメ」
やっぱり拒否される。
ゆっくりと都和は起き上がる。だが、僕も少々我慢できなくなっていたようで僕から押し倒してしまった。
頭の中では離れようと考えたが、僕は目を閉じてしまった。
そして唇に熱がこもる。
足りずに舌を伸ばす。
唇からゆっくり歯を、そして舌を舐める。
絡み付く舌はきっと僕を覚えていてだろうか。
零れる吐息はもはやどちらのものかわからない。
都和が僕の服を脱がそうとしてきたので僕も都和の服を脱がそうとする。すると都和は一瞬だけ緊張を露わにしたが抵抗はなかった。
僕は唇からゆっくりと口を離す。
僕も都和も上のボタンだけ外れた。
「……えっちぃことする?」
都和が言う。
都和の口なのに、都和の声ではなかった。