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「言語には身体に聞く、肉体言語もあるんだぞ!」
「だからってセクハラするな!」
僕はわりと余裕がなかったので垂れていた髪を噛み、引っ張った。
女の命と言われる髪でも、僕は自分の身体の方が大事だった。
「いたたた。獣じゃないんだから」
一瞬のタイミングを逃さずに僕はひじ打ちし、怯んだ隙に拘束から逃れる。
「……ふむ」
遠慮なくしたつもりだが都和の表情を見るとあまり痛くなかったらしい。
それは幸いだが、部屋の出口からは遠ざかってしまった。
「都和……深呼吸して」
にじり寄る都和を制止させるべく口を動かす。
「周が思っているよりは冷静だぞ?」
「じゃあ、セクハラする理由を言いなさい!」
「ふふふ、一つは終わったところだ」
「なにが……っ!?」
身体が動かなくなった。
ベッドに倒れる僕。ゆっくりと都和は僕に覆いかぶさる。
「あー、私の天想代力の回復方法は人に触れることなんだ。んでもって、動けるということを反転させてもらった」
「……!」
「別に無理やりは好きじゃないからそこまでえっちぃことはしないけど、もう少しだけ回復させてもらうぜ?」
ぎゅーっと抱き締められる。
温かく、良い匂いがして、気持ちが良いからこそ。
「んー?」
反転の効果がなくなったところで抱きしめ返してしまった。
しかも結構な時間。
「あの、周……さん?」
都和の方が恥ずかしくなったところで解放された。
「なんか悪かったな……」
「ごめん……」
咄嗟に謝ってしまった。
「ちょっと暴走してたみたいだ」
快活に笑う。だが今もどこか恥ずかしそうだ。
僕も天想代力が戻ったときの摂取が暴走しがちなので怒る気にはなれなかった。
「……ところで呪いって本当なの?」
「なんだろう。誰かに教えてもらったはずなんだが……まあ良いか。それよりもやっぱり昔に会っているよな?」
今回は誤魔化せそうになさそうだけれども。
僕は小さく首を振っておいた。
「いや、だって周が……」
「ごめん。会っていると言われても僕の方は覚えていないの」
小夜や玖乃に言われてそんな気がするだけで記憶にないのだ。
「え、結婚しようって言った約束は?」
「待って……そんなこと言ってたの……?」
かなりキス魔だったことが推測されるので嫌な汗が流れた。