表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/210

172

 自己嫌悪。

 激しく。

 再現性は使わずに深呼吸一つ。

 心を落ち着かせながら身体を清める。

 シャワーは熱く、頭から被ると冷水じゃないのに落ち着く感じがした。

「周さーん!」

 声の振動をシャットアウト。

 頭を洗うことに集中する。

 そう、ちいろが来ないのなら即効で上がって非難すれば良いと思ったのだ。

 人として最低だと言われてもあまり身体に触られたくない僕の冴えないやり方だ。

 そんな時間との勝負をしていると後ろから小夜が抱きついてくる。

「邪魔」

「つれないです! 一緒に洗ったり洗ったり……洗ったり……!」

「洗わないって」

 というか抱きつかれて気付く。

 小夜ってば、タオル巻いてない。

 発育が未熟だとはいえ、女の子としての柔らかさで気恥ずかしくなる僕。

 少しだけ身体をよじらせ離れさせると。

「んー、もう」

 ゴシゴシと僕の頭を洗いだす。

 もうどうにでもなれ。

 さすがに洗ってもらっている間に自分が手を動かすわけにもいかずに、ぼんやりと前を向く。

 鏡に映る自分の姿と小夜の裸体。

 自分はタオルを巻いているから良いが、僕の身体からはみ出ている小夜の部分が眩しい。

「……」

 僕は手に残る泡を飛ばして鏡の世界を閉じた。

「どうしました?」

「なんでもないよ」

「そうですか? ところで周さん。かゆいところはないですか」

「ないよ」

「お嫁さんはいりませんか?」

 強い子だと思う。

 それでも小夜の好きの根源は僕の昔で、僕はその昔を知らないので中々と好き嫌いをはっきりと答えにくい。というか、今ここではいを選んだら色々と取り返しがつかなくなりそうだ。

「小夜が大人になったら答えてあげる」

「年上ですって!」

「まあ……いずれ答えてあげるよ。小夜、髪を流してくれる? ちょっと目に泡が入ってきて痛いかな」

 熱いシャワーは僕の悩みを洗い落すことは出来ず、汚れと泡だけを持って行くのだった。

 次にトリートメントをしようとしたところでシャンプーをかけられる。

 うっ、だがちいろ対策には良いのかもしれない。対策と言っているあたり本当にトラウマだ。

「ところで、ちいろの天想代力ってなんなの?」

「えっとですね。詳しくは知りません。あまり表には出てきませんけれど、効果的にはお薬ですかね?」

 お薬。

 そういえばペッドボトルに睡眠薬なんか仕込まれてたっけ。

 そう思うと薬関連なのだろうか。

「そんなこというと普通に僕たちはちいろの料理を経口摂取しているわけだけど」

「ははは、ある日反乱を起こされたら全滅ですね」

 洒落にならない。

 というかそんな危険と毎日隣り合わせだったのか。

「さっきも言いましたが本当に出てきません。稀に出てきても会話どころか動きもしなかったので無害だと思いますよ? 怒らせるとわかりませんが」

 僕はちいろを怒らせないようにと心で誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ