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答えは見つからないから僕は会いに行かないといけない。
「深夜に奇襲するか……?」
卑怯なことを考えてみたり。
あまり時間をかけたつもりはないが、一階の広間を見渡しても小夜は見当たらなかった。
先に行ってしまったのだろうか。ならば風呂場へと歩を進めるかと思っていると楔に呼び止められた。
「入浴かしら?」
どきりとした。下着を持っているのを見られたらそりゃ言い訳できない。
「そうだよ」
軽く返す。
「ふーん」
するとなぜかにやりと笑われた。
いや、姫城さんはゆっくりと楔と入るはずなので乱入なんてないはずだ。
自分にそう言い聞かせていると、楔は意外な質問をしてきた。
「ところで周はいつまでここにいるつもり?」
「……どういうこと?」
「質問を変えるわ。目的を達成したら学園から去るつもり?」
「……え」
なぜ楔にそんなことを聞かれるのだろう。
いきなりだ。
「個人的にはここにいて欲しいけれど」
「嬉しい言葉だね」
目的を達成したらここにいる意味はない。
わざわざ自分に呪いをかけてまで女になっている意味はない。
女の子の感覚は男のときとずれていて、疲弊するし。
「まだ先だけど……戻ると思う」
「そう」
楔は表情を変えなかった。
微笑のまま。いて欲しいのだろうか。
そして、なぜこのタイミングでそんな話をしたのだろうか。
「周さん?」
お風呂場に先に行っていたと思っていたが、二階から小夜が来た。
部屋にいたのだろうか。
「それでは」
楔は会釈するとトイレや千華の部屋のある廊下の方へ行ってしまった。
「あっ……」
選択肢を間違えた気がする。
嫌な予感が当たらなければ良いが。
「行きましょう!」
小夜は僕の選択肢の後悔する暇を与えてくれない。
手を取ると笑顔を隠しきれないまま僕を脱衣所に連れていく。
観念しているので、僕は小さくため息を吐きながら服を脱いでいく。
脱ぎながら僕は籠に視線を行き渡らせる。ふむ、どうやら先客はいないらしい。
「んふふ……」
小夜に服を脱ぐところをじーっと見られていた。
さすがに恥ずかしいものがある。
「あ、脱がしても良いですか?」
「何を言ってるの?」
「脱がしても良いです……よ?」
「だから恥ずかしいなら言わないでよ。こっちも恥ずかしくなるんだから」
とりあえず、僕は服を脱いだ。
そしてタオルを身体に素早く巻きつける。
勿論恥ずかしいから。
小夜は僕が脱いだのを確認すると、ゆっくりと脱ぎだす。
上着のボタンが外れたところで一言。
「脱がしてあげようか?」
「周さん……」
嬉しいのか恥ずかしいのかよくわからない顔をしている。
さすがに意地悪過ぎたか。
「嘘だよ。先に行ってるから」
浴室に行ってから自身の頬を押さえる。
熱い気がした。
「僕は何を言っているんだか……」