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 まるで親の敵のように語気を強くする。

 僕のように何かが変わっているのだろうか。パッと見ではよくわからない。ここで確認するのは簡単だが流石にトイレの個室とはいえ女の子を裸に剥くわけにはいかない。楔の弱みが知りたいけれども。

「周がここに来たのは何かの運命なのかな」

「あまり嬉しくない廻り合わせだこと」

「でも、楽しくなってきたわ」

「協力してくれるってこと?」

 楔は大げさにシニカルに笑った。

 自虐的にも見える。

「手を組みましょう」

 差し出された手を緩慢に握る。握手ではなく添えた感じで。僕らはいつもこうして不確かで曖昧な約束でも結果を残してきた。

 手を握る強さをみて楔は眼鏡をくいっと上げ、ヘッドドレスを付け直す。

 どうやら一旦仕切り直すみたいだ。

 さすがに長くいるとトイレに二人で入っているところを見られるリスクが高まる。見つかったら誤魔化せないし。

「こほん。とりあえずは周さんまたあとで御会いして話しましょう。くれぐれも外での関係性は内緒でお願いします」

 芝居モードに入りながらトイレからいなくなった。

 色々と聞きたいことは沢山あるが、我慢することにした。

 足首のスパッツを上げてから、深呼吸一つして僕はトイレから出る。トイレで深呼吸はするものではないが感情は少し落ち着き、頭もちょっと冷めた。疲労や慣れない環境とはいえ感情の揺らぎが大きくなっていることに気付いて少し自己嫌悪。

 こんなとき兄はどんな行動を取るだろうか。

「あれ?」

 トイレの前にいると思ったが楔はいなかった。いないと僕は都和の部屋に行けないのに。

 玄関の方だろうか。とりあえず来た道を戻ることにする。

 廊下は小奇麗で、毛の長い絨毯じゅうたんが敷き詰められており、靴を通しても柔らかい感触を足に返す。靴を脱がなくて良いのだろうか。

「リバース」

 重い扉の前でふと、後ろから幼い声がした。

「えっと、こんばんは」

 後ろを振り返ると幼い少女がいた。

 中学生である僕の妹より幼いのではないだろうか。制服を着ていなければ小学生にだって間違えられそうだ。

 目は少し垂れ目で優しげで、腰以上に長い銀髪をリボンでツインテールにまとめている。

「こんばんは、初瀬小夜はせさよと言います」

 そういってスカートを軽くたくし上げ頭を下げた。

 見事にお嬢様だ。

 腰に刃物を帯びていなければ。

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