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その後の展開は流されるがままだった。
もういっそちいろに性別をばらそうかとも思ったのだがよく考えると一度裸を見せているのでわざわざ男に戻って見せることになる。
そこまではしたくない。
しかも小夜に戻れることがばれるのも問題なので僕は黙ることになった。
ちきしょう。
姫城さんはというと、あんまり多人数とは入りたくないので楔と入ると言っていた。
交換出来るのなら僕も静かな方で入りたい。
ただ、楔も姫城さんも天想代力が怖いけれども。
一旦小夜と一緒に歩いて都和の部屋へ。
廊下を歩いているときに小夜にジト目で聞く。
「どういうこと?」
目を合わせない。それは単純に見ないふりをしているのではなく。
「……」
顔が赤い。
恥ずかしいならあんなこと言わなきゃいいのに。
「周さん。こうでもしないと一緒にお風呂に……」
どうやら僕の対応のせいらしい。
「別に髪の毛ぐらい洗ってあげるからちいろの申し出を断って来てよ」
「でも、周さんがマッサージしてもらってるところも見たいです……」
マニアックだった。
ため息一つ。
いや、二つくらい吐いておく。
十分後に都和のところに行くと満面な笑みで(袖で顔を隠しているが隠し切れていない)言うと小走りで部屋に戻っていった。
まあいい。
今夜で大部分は片付くはずだ。
希望だけれども。
部屋に戻るとソファーでテレビを見ながら都和がアイスを食べていた。
呑気である。
僕の今の心象風景が砂漠かつ砂嵐なことをそれとなく伝えてあげたい気分でもある。
睨んでみるか?
「あーん」
そう思ってじっと見ているとなぜか勘違いされた。
そうじゃない。
とはいえ、ソファーから立ちあがってまで僕の口元に持ってきたアイスから逃れることは出来ず、僕はついつい口にしてしまう。
「ん」
バニラ味が僕の砂漠にオアシスを生む。
砂嵐が通過中だけども。
「ふふふ、間接キスだな」
「……子どもじゃないんだから」
僕はあんまり気にしない。こともないけれども。まあ、都和だから良いと思ってしまった。下手に拒む理由もない。
「あのときは……」
「昔でしょうが」
「ランドセルを担いでいたのに」
間接キスを気にするのは小学生らしい。
「……どうでもいいわ」
「なんだ荒れてるな。肌水使うか?」
「肌荒れで心まで荒んでたまりますか」
「リップクリーム? そんな荒れてなさそうだが」
「わざとなの……?」
元気につっこむことも出来ない。
「んー、ちゃんとこの部屋は加湿機使っているんだがなあ」
そんなことを言いつつ、僕の口元に再度スプーンを運ぶ。
僕は律儀に口を開けると、ちょんと唇にスプーンを当てられた。
意地悪だ。
「そんな目をするなよ。ちゃんと、周の分は冷蔵庫にあるぜ?」