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「おい」
「どうしたのちいろ?」
片付け終わった部屋には僕とちいろと小夜と姫城さんが残っている。
「身体が硬くないか? 緊張しているというか警戒しているというか」
鋭いと思う。こういう気配りが人気の秘密なのだろう。
そうか、緊張しているのかもしれない。
この後僕は裏千華と会うし、伽羅に会うつもりである。
下手すると死ぬかもしれないし、十八禁かもしれない。
それでも助けを請わず、僕は誤魔化しておいた。
「慣れないところにいるんだから緊張の連続だよね」
嘘ではない。
学園生活の疲労は大きい。
「ちっ、慣れたと思っていたんだがな」
軽い口ぶり。それでも優しい言葉だ。
「いくら人間が環境適応するといってもまだ一週間も経ってないんだから」
「そうだな……」
そういって少し口元に手を持っていき考えるようにする。
僕のシックスセンスは何か嫌な提案をされると思ったので早々に切り抜けることを選択。
「今日は早めに寝ることにし……」
「あー、風呂でマッサージしてやるよ」
嫌な予感は的中。
気が回るくせになぜ空回るのか。
身体を洗われたのは結構なトラウマとなっているため僕はやんわりと拒否する。
「いえ、そこまでしていただかなくても……」
「……リバース」
部屋に残っていた小夜が不吉なことを口走っていた。
どうして今、このタイミングでスイッチを入れ替えるのだ。
「周さん、行きましょう!」
敵に囲まれた。
「ほら、ご飯食べたばかりでお腹が膨れて見えて恥ずかしいから」
拙い言い訳は刹那に切り裂かれる。
「ん、大丈夫だ。女しかいねーし」