167
それにしても風の噂ってどこで聞いたのやら。
こんな感じで僕が男だなんて秘密がばれないことを祈るばかりである。
「詳しく聞いても良いっすか?」
言いにくそうにしている姫城さんに話すように促す羽衣は中々チャレンジャーだと思う。
だが恐らく、男が来ることに対してではなく噂の真偽に対しての興味なのだろう。
「期待するようなことはないのじゃ。それに来るのは週末の夕方じゃからわずかな生徒にしか目に触れんじゃろう」
「週末って今週末か?」
ちいろは軽く聞く。あまり興味はなさそうだが話の流れに沿ったのだろう。
「違うのじゃ」
姫城さんはぴしゃりと言う。これ以上詮索されたくなさそうだ。案外、姫城さんの許婚が来るのかもしれないなんて適当なことを考えていると話題がころころと変わっていく。
今日学園であった事やニュースや流行りものから経済の話と飛び、小物や化粧品や下着の話まで。
話の中心は都和とちいろと羽衣なので聞いているだけで済むことが多く、比較的食事に集中できた。
お腹が膨れたところで今日はデザートはないと聞く。そりゃ、毎日あってもおかしいものだが。
「い、いりました?」
小夜はおずおずと聞いてくる。
「別に良いよ」
なんて軽く返したがやや口寂しかったりする。
「……餌付けされていたのかも」
今日は食べ過ぎるところまでは食べなかったので片付けに協力した。
千華はなにか言いたそうにしていたが、話しかけには来なかった。気になるがどうせあとで話すことになるので気にしないことにする。
皿を片づけ終えて、僕は一旦都和の部屋に戻ろうとして呼び止められた。