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簡単に説明した。
能力自体は都和も持っているのですぐに理解された。
「元々僕にあった能力だから気にしないように」
前以ってそう伝えたが悩んでいる表情を浮かべる。
「気にしなくていいって」
「いや、デジャブというかなんだろう。なんか知っていたような気がする」
それは昔のことを思い出してのことか、それとも天想代力の人格を通してのことかどっちだろうか。
兎にも角にも誤解(?)は晴れたようだ。
「ふむふむ、つまり周はキス魔になったってこと?」
「中々ストレートだね……正しいけれども精確じゃないよ」
否定できないのがかなしいところだ。
「まあ、同性でノーカンだからしたいなら……」
口元を隠して怪しげに笑いながらそう言われた。
「そういう芝居はいりません」
ぴしゃりとこの場では返せるが果たして迫られた場合は断れるのだろうか。
そうこう言っていると、羽衣がご飯だと告げに部屋にやってきた。
「ご飯っすよ?」
「うん、行こうか。ところで都和って小夜の手伝いしてたんじゃないの?」
「ああ、途中まではな。後でちいろが来たから丸投げした」
「……」
何も言うまい。
並べられていた晩御飯は煮物、焼き魚、お味噌汁といった和食を中心に作られていた。
小夜は和食が得意なのだろうか。
和食以外にも小鉢に入れられた葉物や肉料理が並ぶ。この辺りはちいろだろうか。
しっかりとした味付けはとても美味しく感じられる。
ゆっくりとよく噛んでいると袖を掴んでくる小夜。
「なに?」
「もっと派手なのが良かった……?」
小夜は小夜でやはり人前だと静かだ。
ところで料理の派手さってなんだろうか。
「美味しいよ」
そう伝えると口元を押さえて喜ぶのだった。
楔がなぜか僕のことを見ていたがきっと何かしらの文句が言いたかったのだろう。僕は見なかったことにしておいた。
「そういえばっすけれども、皆さんは知っていますか?」
「あ、なんだ?」
羽衣が話を切りだしてきたことにちいろが反応する。それを僕たちは聞いていた。
「風の噂っすけれども、学園に男の人が来るらしいっす」
「……」
男が僕ではないだろうけれどもやや気まずい話題だ。
「断ったのじゃが……」
それに反応したのは姫城さんだ。
そういえば言っていた気がする。