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「反応が薄いな。喜んでくれよ」
「折角だけどまだ頂けないからね」
それにもらうつもりもない。
いや、お金なんだからもらえればこしたことはないだろう。
けれども、単純に今回の問題は僕にも問題があるからだ。
「まあいい、終わってからパーっと使おうぜ」
「いや、なんで都和も使うつもりなんだよ」
都和は僕のつっこみににんまりと笑う。
「ふふふ、弱つっこみの虜だ」
僕がそれに苦笑しているとノックが聞こえた。
まだ食事には早そうだが。
都和はお金を片づけていたので僕が訪問者の相手になるのだった。
「はーい?」
扉を開け相手を確認。
僕は思わず扉を閉める。
「おっと、閉めるな閉めるな」
扉の隙間に足を入れ、閉め切れないようにしてくる。まるで性質の悪い押し売りみたいだ。
というわけで玖乃だった。
連絡したかったが、このタイミングは中々に悪い。
例えば、都和に僕が十年前にあったことがあるなんて言われると色々と説明がこんがらがってしまう。
「あーまねちゃーん、あーそびーましょーう?」
軽くホラーである。
僕は口をチャックするように身振り手振りで伝えるが玖乃には届かない。
「周、誰が来たんだ?」
お金を仕舞い終えた都和が僕に近寄ってくる。
あまり都和に玖乃を会わせたくないので僕は思いっきり玖乃の足を踏んだ。
「な!?」
「ふっ、想定の範囲内だ」
安全靴だった。なんて対策だ。
女子高生が履く物ではないぞ。
「くっ! 再現性!」
僕はドアに一定の力がかかるようにし、チェーンをかけてとりあえず都和を入口から離す。
「誰が来たっていうんだ?」
「いや、説明すると複雑で……追い出してくるからちょっと待ってて。絶対に来ないでね? これはふりじゃないからね?」
僕はベッドに都和が閉まったことを確認し、入口へ。
「ふー……」
チェーンを外し、僕は玖乃と相対する。
部屋の外で話すべく僕はジェスチャーで促したが、なぜか強引に部屋の中へ押し入られた。
抵抗は空しく、僕は抱えられそのまま玖乃と都和はあってしまった。
「えっと……どちらさまだ?」
都和は不思議な目で見ている。
そりゃ、僕が肩で担がれているからそうか。