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「遠慮せずにもっと体重をかけて下さい!」
僕は恐る恐る乗せる。
嬉しそうだ。
「……言っておくけど。小夜は可愛くてもいやらしい目で見れないからね?」
「その目をいつか曇らせてあげます!」
大した宣告だ。
強引に来たら恐らく今の僕では流されそう。
再現性で少し前の僕を取り戻した方が良いのだろうか。
それでも、幸せそうにしている小夜の表情を見ていると戻ろうという気も削がれてしまうのだった。
五分は経っていないにしろ、気まずく思ってきた僕は離れようとするべく動く。
「終わり!」
しかし、小夜が僕に抱きついていてすぐには離れられない。
「ん!」
目を閉じ、唇を軽く尖らせる小夜。
僕はそれに何の疑問も持たずに軽く口づけしてしまい、それをしている自分に気付いて自己嫌悪と共に部屋から立ち去るのだった。
後ろから僕の声が聞こえたが僕は止まれない。
「……やばいやばい、普段からマスクしていないと洒落にならないくらいのレベルだ」
天想代力が少ないということでもないのに僕は補給方法に振り回されている。
廊下の壁に手を着き反省。猿でも出来そうなんて自嘲していると。
「おろ、お帰りー」
都和が階段の方から上がってきた。
「顔が赤いが大丈夫か?」
「……」
僕は黙るしかなかった。
「熱があるとか?」
おでこを近づけてくる都和に僕は口が疼いた。
「……っ!?」
なんとか思い留まる。
「少し熱いか? 部屋行こうぜ」
僕は都和に手を取られ、有無を言わさず部屋に連れて行かれた。
とても一人になりたい状態だったのだが都和に確認することがあるので僕は深呼吸をして落ち着かせる。
駄目だったら天想代力を使うまでだ。