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斜め上の対応だ。
僕は丁重に断る。
「誰も邪魔しないのに……」
「論理や倫理や道徳や風習が僕らには立ち塞がるんだよ」
なんとなく言葉を並べて逃げる。
すると話は違う方に転がった。
「んー、女の子だから怖いとかです? 周さんの呪いでも解いてみますか」
そういってベッド下から取り出したのは初日に帯刀していた日本刀。
恐らくは玖乃から譲り受けたものだろう。
とはいえ、下手に男に戻っても色々とまずい。
「待ったこれで僕を斬るのが解呪とか言わないよね?」
「言いませんよ。ただし、この能力は大分独特ですけどね」
刀の意味とは。
「じゃあ、これから周さんどんどん斬っていって下さい。私は答えやすい質問をしていくので、はい又はいいえで答えて下さい。途中、嘘を吐いたり、言い詰まると初めからになります」
「そういう斬り方なの!?」
「行きますね。周さんは好きな人はいますか?」
「……いいえ」
「ん」
失敗したようだ。
初めから。
「周さんは年上が好き?」
「いいえ」
別にこだわりはないのだが。
「周さんは強引に攻められたい?」
「いいえ」
「周さんは身長が小さい子が好き?」
「あ、あの、小夜さん?」
「周さんは私が好きですか?」
「待ちなさい!」
スロットル全開の小夜をなんとか止める。
「本当にこんな使い方なの!」
「わかったけどあのまんまだったら僕も小夜も怪我しちゃうから」
刀を振るのではなく怪我をしてどうするのか。
後日玖乃に確認するとこの使い方は嘘だと判明するがそれはまた別の話。
「下手に呪い解くと、皆にばれちゃうから……ね?」
「むー、だってこんなに私は頑張って周さんを誘っているのにお預けはきついですよ。そろそろご褒美が欲しいです」
付きあってもいないのには恐らく小夜の中では愚問なので止めておく。
「また頼る羽目になるからちょっとだけね……あんまりいやらしいのは駄目だから」
そういうとベッドに横になる小夜。
「上から乗って下さい!」
仰向けはさすがに恥ずかしいけれども、それでも僕は上から抱きしめてあげた。
「僕もつくづく麻痺してきたな……」
恋愛ではなさそうだが僕の中でいやらしい下心が微量に出てきている気がする。