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「それで」
女になっていることに然程驚かずに話を続ける。出方を待っているようだ。
一呼吸置いて、回りくどくせずに素直に協力要請した。
「男の子に戻りたいから協力してくれない?」
「……難しいわ」
しかし、楔には珍しく困難を示した。
中学の頃はノータイムで色んなことに首をつっこんでいたのに随分と弱気だ。僕は年月が彼女を変えたのか不安になった。
「らしくないね」
「そうね」
「人が変わったみたい」
そんな風に軽口を叩くと、楔は僕に少し近づき意地悪そうに笑う。
近寄ったその意図に気付くよりも先に電子音が聞こえて。
「んにぃっ!?」
僕は絶叫する。
ウォッシュレット機能を使われた。
臀部への水流は弱いものの驚いて思わず飛び上がってしまったので、スカートに水がかかってしまった。
全く、洒落にならない。
「な、なんなのさ」
「周は呪われたのよ」
先程から聞かれる呪いの言葉。
まさか切りこんだ僕が置いていかれるとは思わなかった。
冷静にウォッシュレットを止め、トイレットペーパーで濡れた場所を拭きながら不満そうに声を出し抗議した。
「呪いなんて……」
楔は僕の感情を無視し、話を続ける。服が濡れてしまったのでトイレから出たいのだけど。
「非科学的でしょ。でも現実問題、周は性別が変わっているよね。まあ呪いというのは大げさかもしれないけど、無視できない被害を無差別で無関係で無遠慮に無抵抗な人にばらまいているわ」




