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「それは光栄ですね」
「んふふふー。今日の俺様は違う。今回はちょっと細工をして数で攻める!」
僕は口を手で塞いだ。
「んんんんん!!」
これは割と有効な手なのかもしれない。
あとは目とか塞ぐと強要のしようがないかもしれない。
そう思うと裏方に徹されない限りは弱いのかもしれない。
キミが慎重な性格でなくて良かったと心から思う。
「こっちは解決したわよーって、何してるの?」
そんなことを思っていると家庭科室の扉が開いた。そうか、鍵は楔が持っているのか。
どことなく蔑まれている。
いや、この格好はいやらしいことでなく戦力的にかなり重要なのだが。説明は許されそうになかった。
「……三人いたのに勝ったの?」
手を見ると三束程包帯が。
「恐らくは聴覚で判断していたようでしたので耳元で携帯電話にあった伊織の声を再生したところ隙が出来たのでその間にしました」
なんというか用意が良い。
確かに、基本的にキミの命令は声が多いからそうなのか。
「それで、周……なにしているんです?」
呆れられた。
いや、そうでなくて。
「わー、修羅場っすね……」
さらに羽衣にまで見られた。
ついていない。
とりあえず、戦闘は終了。
どことなくキミは不満そうな表情を浮かべていたけれども、「俺様は今回は反転に義理立てただけだからな。次こそモノにしてやる!」と不穏な捨て台詞を吐くのだった。
それの意味することがどんなことなのか。また夜に何かあるのかと心配しつつも意識を失っている姫城さんと楔、羽衣と共に寮に帰るのだった。
「お帰りなさい」
出迎えてくれたのは千華だった。
ちなみに姫城さんは結局あのあとずっと今まで起きなかったので僕が担いで連れてくる羽目になった。
楔は不機嫌であまり手伝ってくれそうになく、羽衣に持たせるわけにも行かないので休憩なく運んだ。軽いがさすがにこの距離はつらく、何度も天想代力で体力を回復したのは言うまでもない。
「周様、少し良いでしょうか?」
帰宅して早々に千華が僕にそんなことを言ってくる。
何のことかと思いつつ、一旦玄関に程近いソファーに姫城さんを寝かせてから僕は千華に連れられて部屋の方へ。