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「いや、もうちょっとなんとかしてみるよ」
このぐらい解決しないと干渉や反転には勝てないだろうし。
「あまり、周が女の子に乱暴に組み敷かれているのは見たくないのですが」
それは気遣いなのか怒っているのか。表情がここからでは見えないのでわからない。
さてと、整理するか。
天想代力を使って空間移動は可能で拘束は解ける。
しかし命令は続いているのでまた拘束しに来ると。
「姫城さん、これの効果の時間と距離は?」
「うーむ、わからないのじゃ。しかしのう、この学園全体の距離は網羅しているとは思うのじゃ」
下手に寮まで戻っても意味がない可能性ありか。時間も結構ありそうだ。
「……仮にだけど、姫城さんの意識がなくなったら彼女達はどうなるの?」
「命令は変わらないのじゃ」
ふむ。厄介だな。
あまり学園の生徒を痛めつけるわけにもいかないし。天想代力もあまり使うと僕が補給的な意味で暴走しそうだし。
「周?」
「考え中」
包帯に天想代力が付加されているので、再現性も彼女達には利きにくい。
あれ、もしかして再現性って使いにくいんじゃ。
「千華に頼みますか?」
「仮に千華に頼んでどうするのさ?」
「力で包帯取ったら?」
粗暴な考えだった。
ところで楔は姫城さんの前であまり猫を被っていないようだが良いのだろうか。
寮生の中でも何人は楔の演技に気付いているのやら。
「楔、悪いけど。ドアを開けておいてくれる?」
「?」
入口のドアを不思議そうに開けた。
さてと、一体どこまで逃げ切れるか。
天想代力を使用。
僕は開いたドアから逃げる。
「ちょっと!」
楔の抗議を無視して僕は階段を駆け上がる。背中からは当然、三人の足音が聞こえた。階段は器用に登れるらしい。目が封じられているくせにどうなっているのか。
まあ、いい。最上階まで駆け上がる。
空き教室があれば良かったがそうは言ってられない。
飛び込んだ教室には一人の生徒がいた。
「なんなんすか!?」
都合が良いことに羽衣だった。
これなら言い訳しやすい。
「目を閉じてなさい」
そういってから、僕は躊躇なく躊躇いもなく四階の窓から外へと飛び降りた。
三人の少女は。
「……」
ついてこなかった。