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「僕が呼んだわけじゃないんだけど」
「では、誰ですか?」
「さ……」
小夜と言いかけてやめる。
小夜に矛先が言っても困る。
昔はそんなことを気にしなかったのに。
「……少し」
「なに、楔?」
「周がいて仮面が取れかけてきたわ」
右手で乱暴に髪をかきあげると楔は小さくため息を吐いた。
きっと良い意味ではないのだろう。
「周も変わったわね」
「まあ、色々とあって……」
過去からの使者が多すぎて。
「別に今の周は嫌いではないです。ただ、前の周も良かったのですが」
「キリリとしろと」
「貴方は前の自分をどう思っているの?」
そんなことを言われてもだ。
「ところで楔は帰らなくていいの?」
「良いの。小夜が作るなんて言ってたし、少し羽を伸ばさせて」
そういって両手を上げ、わざとらしく伸びをした。
僕は僕で小夜の食事に期待していると、なぜか女生徒が飛び込むように入ってきた。
それも一人ではなく三名。
いずれも包帯のような黒い布で目元を隠している。
「なっ!?」
危険を感じ、僕は咄嗟に楔の前に出る。しかし、楔も前に出たので横並びになる。
なんだこれ。
「えっ!?」
それからその三名は楔に目をくれることもなく僕に飛びついて来た。
避けるわけにも行かず容易く組み敷かれる。
まるでわけがわからない。
「……どっきり?」
置いてけぼりの楔。
「だといいんですけど」
遅れて入ってきたのは姫城さんだった。
いや、目の色が違う。
キミだ。