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「え」
固まる僕。
都和が感じていた十年来の友人みたいな奇妙な錯覚はあっていた。
ということは都和も記憶を失っているであろう。
それはなぜなのか。
色々と疑問は尽きない。
何の狙いがあって僕がここにいるのか。
「ぐっもーにんっす!」
とりあえずは朝ごはんを食べてから考えることにしよう。
軽いノックと、軽快な声が室内に響き渡る。扉が薄いわけではないのに声量が大きいものだ。
開いた扉から覗いた羽衣は笑顔から驚きに変わり、小悪魔チックな表情に移り変わる。
「ふふふ、さすが周先輩っす。ごゆっくりどうぞっす!」
閉まる扉。
「待って!」
「どうする。ごゆっくりする?」
動じない玖乃と、腰に巻きついた都和(伽羅?)のせいで僕は朝から修羅場を迎えるのだった。
「じゃあ、俺は自主休校ってわけで小夜の部屋にいるぜ」
と玖乃が言い残してはや八時間は経過した。
都和はなぜか戻らないので玖乃の魔の手を恐れた小夜が休んだ。
僕はもんやりとした気持ちのまま授業を受けた。
「そもそも、僕が授業を受ける意味は……」
流されるように全ての授業を受け終えて、僕はため息一つ。
このまま帰ってあの雰囲気なところに行きたくないなー、なんて思っていると。
「少し良いでしょうか?」
楔が立ちふさがった。
いつも色気のないメイド姿だったので学園の制服姿は何気にレアだ。
伊達眼鏡はここでも付けているらしい。
「えーっと……」
対応を決め兼ねていると引っ張られる。
顔見知りの知人レベルは出来つつあるのに、やはり僕は奇異な視線に晒される運命らしい。
階段を下ってやはりというか奥の部屋。家庭科室に連れ込まれてしまう。
「こんなところの鍵なんてよく持ってるね」
「中学校と一緒で、コネをちゃんと作ればどこにだって入れるわよ。それで、あれはなに?」
玖乃のことだろうか。
僕に言われても困るだけなのだが。




