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内容は短い。
今回は上だけ。次はないとのことだった。
「……」
すぐに来ることはないだろうが、天想代力を集めないといけないと思った。
さて、飲み物が来るまでに一度トイレにでも行こう。
僕は部屋を出る。
「え、周さん」
出たところを小夜に見られた。
なんでこんな朝早くに。しかも一階に?
とりあえず、僕は黙って部屋の扉を閉める。
「ちょっと!」
詰め寄ってくる小夜。ドアを強めにノックされる。
鍵を閉めたので大丈夫だろうが。
「てい!」
油断出来なかった。
開けられてしまう。大人げなくもう一度閉めようかと思ったが、目の色が変わった小夜の機嫌を損ねることはやめておくことにする。
「どうしたのこんな朝早くに?」
「私はお弁当の材料で使って良いものを聞こうと……って私は良いです! 周さんはここで何をしていたんですか!」
「……なにをしていたんだろうね」
むしろ何をされていたかだが。文面では何もされなかったようだが信じられない。体調は良いけれども。
「ん」
目を閉じる小夜。
そして唇を突き出す。
僕は黙ってその唇に自身の唇をかさね……ない。
「待った。恋人でもないのにおかしいって」
「恋人でない人のところで一晩いたのに?」
「なにもなかったって」
暫定だけど。
「やっぱり一晩いたのですね……」
ぐっ。
やはり小夜は僕には扱い切れそうにない。
キスはしなかったものの、ハグには応えることにした。
「まあ、周さんは呪いのせいで女性になっているから何もないですもんね」
ハグでやや機嫌が直る。
ただ、呪いに関しては。
「……え、周さん?」
昨日自力で解いてしまった。
天想代力は天想代力に対して効果が出ない(もしくは発揮されにくい)。
呪いも天想代力で効果が出ない。けれども再現性で呪いを再度かけ直すことにより反転した性別が反転したのだ。
あくまで同じ呪いだからこそ出来たみたいだ。
偶然なってそのままだが、ちょっと早まったかもしれない。
目が据わっている。
やばい。暴走している。
僕は再度自身に呪いをかけ直した。
「……あ、あれ?」
「あんまり触らないでくれる?」
間一髪。
寿命が短くなったかもしれない。
演技の練習しておいて良かった。心底思う。
「ところでだけど、もし僕が男に戻ってたらどうしてたの?」
「ふふふ……」
怖かった。嫉妬心が爆発している。
とりあえず、落ち着くまでハグさせておくと恥ずかしそうに顔を赤らめるのだった。
「どうやら何もなかったみたいですね……すみません暴走しちゃって」
無罪を勝ち取った。
楔の性格上そんなことをする人ではないと思ったのだろうか。
「何はともあれ、朝から幸せですぅ……」
蕩けている。
僕は少し疲れた。精神的に。