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少しだけセンチメンタルになっていると気付く。
それに精神的に楔に近づき過ぎて恥ずかしいのだ。
僕は咄嗟に再現する。
精神状態を落ちつけるべく都合の良い状態に。
「ふぅ……」
便利だ。
ただ、この能力は恐らく人格が残した、もしくは傷跡のような呪いを無理やりに再現して使っているのだと思う。
足りない一部分を再現して、再現性を発揮。
これは勘なのだが、おそらく当たっているだろう。
「……」
目標を修正。人格を追いだす戦力を充実させるべく、僕の天想代力の人格である伽羅を探そうと思う。
死んではいないだろうが、どこにいるのだろうか。
「周」
ふと気付くと目の前に楔の顔があった。
「なに?」
「あまり無茶しないでよ?」
鋭い。
いや、無茶をしたくてしているわけではないのだがどうしても最適なのがそれだと思ってしまうのです。
「嫌な予感がする」
「やめてよ。縁起でもない」
女性のシックスセンスは怖いんだから。
というかフラグじゃないだろうな。
「ちょっと私の悪いくせかも。お気に入りは保護したくなっちゃう」
楔は口元を歪める。
珍しく感情的な気がする。
「そういえば楔は……何に困っているの?」
「……今はまだ内緒にしておきますよっと。さて、ちょっと飲み物でも持ってきますね」
笑みを浮かべそう言うと、立ち上がってそのまま部屋から出て行ってしまった。
「……」
僕はそのまま楔のベッドに倒れる。
ちょっと気恥ずかしいが、優しい匂いが鼻をくすぐって心地よい。
落ち着く匂いだ。再現しているので眠たくはないけれどもこのままボーっとしているのも悪くないかもしれない。
ふと僕はポケットの中に入れられたメモに気付く。
「うぐ……」
干渉からだった。