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都和に違和感を気付かれないようにとウブな反応を演じてみせる。
「お願いします」
「ん、じゃあまたあとでな」
「では、行きましょうか」
こうして僕は楔に連れられ、トイレのある一階の奥へ。唯一誤算だったのは都和の視線がなくなるまで無言かと思いきや、トイレの前まで無言だったことだ。
「どうぞ」
トイレのドアを開けられ中へと促される。
「いや、あの楔?」
「どうぞ」
楔の笑みに押され反論することは出来ず。トイレに入ることを余議なくされた。うう、流されやすい性格を治したい。せめてトイレの小の水流には負けないぐらいの状況に流されにくい性格になりたいものだ。
さて、切り替えは得意なので全く出ないわけではないから折角なのでしていくことにする。
スカートをたくし上げスパッツを脱ぎ、僕は便座に腰を下ろす。下着がスパッツなのは僕が女物の下着に手を出したくないからである、まる。
下腹部に力を入れ、まだまだ慣れない感覚に身を任せる。
どことなくこそばゆいものの、嫌悪には至らない。この感覚に慣れてしまっては男としては駄目だけれども。
「ん?」
小さな物音がしてふと前を見ると、ドアノブが回っていた。
思考が止まる。
「ひにゃっ!?」
フリルが控えめに入ったロングスカートが目に映ったところで鍵をかけわすれていた致命に気付く。ここが戦場なら即死ものである。広いトイレでは途中で鍵を閉めることは出来ず、スパッツも足元なので咄嗟に立ち上がれない。
「全く……誘っていたの?」
シニカルに僕に笑みを浮かべた彼女はそういって視線を僕の足元へ持っていく。
「私、そういう趣味はないんだけど」
後ろ手でトイレのドアを閉め、鍵を閉められた。
ヘッドドレスを取り、肩より短い赤い髪をかきあげると意地悪そうな表情を浮かべて僕にきつめの一言をまるで弾丸のように放つ。
「変態」




