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僕は仰向けになり息も絶え絶えにして聞く。
大分つらいんだけども聞くタイミングはここだ。
「そうですね。天想代力を纏う主としての資質の高さかな。例えば、都和は複数の天想代力の人格をキープ出来たり、千華は人格が前に出しやすいなんて聞きますね」
「僕は……?」
「周は美味しいんですよ。色々と」
舌舐めずり。
え、僕は食物なのか。
「僕の価値って……」
「だからつまみ食いさせていただきます」
僕の上に乗りかかる干渉。
馬乗りだ。かなり危険な体勢な気がするので僕は左手をなんとか天井に向ける。
「なに、この手は?」
抵抗と思われたがそうではない。
優しく掴まれる。恋人繋ぎに手を繋がれたが違うのだ。
「……解放」
「え」
ナイフは一本だけではなくスペアをちゃんと用意していた。
天井に一本。
微量な天想代力が空間に伝播し、ナイフは重力に引かれて落ちた。
そして、見事僕との間にいた干渉の腹部に当たる。
「あたっ」
当たったのは刃の部分ではなかった。
抵抗失敗。
「惜しかったですね」
顔の近くでいやらしく笑われる。
それがとても屈辱的だった。
結局この後は、五分くらい馬鹿カップルのようないちゃつき様なキスをされて体力的な限界を迎えた僕は気絶してしまうのだった。