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その言葉を少し疑問に思う。
私たちとは誰だろうか。
それはそうと、僕はゆっくりと再現していく。
ナイフ。
それは裏千華が用いた脱力ナイフだ。
僕はそれを一切の容赦なく干渉に突き立てた。
「……っ!!」
湯の中なので目を開けるなんて出来ないけれど、触れあっているので間違えようもないが。
なぜか感触は異様に硬い。
まるで床に突き立てたかのように。
「回避率に干渉ってね。周を相手に油断はしませんって」
どうやら失敗したようだ。
「惜しかったですね。ですがそういうものです。どんなに走るコツがわかっていてもすぐに実践なんて出来ませんよ」
そういって、干渉は笑う。
「天想代力も触った感じ、使える程なさそうですね。では今から少しだけ抵抗力を奪うために酸欠の状態を繰り返します。三十秒間息を止めて下さい」
そういって、そのまま三十秒を迎える。
ゆったりとした干渉の声はひどく僕を疲弊させた。
「はい、一回目」
湯船から顔を上げさせられる。深く息をしたところで抵抗空しく、引きずり込まれる。
水を吸った服は重く不快で服なんて着なければ良かったと後悔した。
「二回目。まだまだ元気ですね」
三十秒を何回も繰り返す。
僕が疲弊するまで。
「まあ、このぐらいですかね」
僕が芝居や冗談抜きでぐったりとしたところでようやく解放された。
荒い息を繰り返し、肺に空気を行き渡らせる。
「ああ、安心して下さい。溺れるようなことにはならないようにちゃんと干渉してました」
安全に僕を拷問していたとでも言うのか。
いじめもいいところだ。
「ふーふー……僕に何があるって言うの?」