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「大丈夫……」
だと思いたい。
メールを信用するならば僕には天想代力の人格がいないので暴走することはないはずなのだが。
「の?」
自然と僕は姫城さんに顔を近づけていた。
「……くっ」
十センチ程に近づいたところで止まる。僕は何をしようとしているのか。
やや自己嫌悪。
「どうしたのじゃ? あまり天想代力がないのかのう?」
「かもしれないですね……あまり近寄らない方が良いですよ」
「放っておいてもいかんじゃろうが。手伝うかの?」
「……」
ありがたい話だが、僕の場合の補給方法はキスなので簡単には頷けない。
だからといって他の子にするべきかと悩んでいると、姫城さんが僕の顔を心配そうに覗く。
「恥ずかしいことなのかの? ならばあとで手伝っても良いのじゃが」
年下に心配される僕。情けない。
そもそも天想代力を使ってもいないのになくなるって漏れているんじゃないだろうか。
「……」
僕は黙って頷いておいた。熱気のせいにしておこう。
「七海の転校は天想代力のせいかの?」
「いえ、そういうことではないんですが……」
「難しいのう。じゃが、困っていることがあれば手伝うからの?」
頼りになる。
ありがたい話だ。
やはり人の上に立てる人なんだな、と僕の中の評価を上げていたが次のセリフで評価の上がりが止まる。
「そろそろ、髪を洗ってもらえるかの?」
そういえば一人で入れないんだった。
姫城さんは子どもなのか大人なのかわかりにくい。お金持ちで、権力者なのだから仕方ないのだろうか。
僕は茹る前に姫城さんと湯船から抜け出してシャワーの前に座る。身体を洗っている楔と並ぶことにして僕は一度姫城さんの髪にお湯を通した。
「僕にちいろ並みの丁寧さを求められても困るからね」
予防線を張る。
そもそも僕自身は髪をぞんざいに扱うタイプで妹によく怒られていたので期待しないで欲しい。