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疑惑を持ちながらも羽衣はそのまま手を振って行ったので飲み込んでおいた。
「さてと」
脱衣所に到達。
僕を除いて七人利用しているらしいが、幸いながら中には誰もいないようだ。
僕が乱雑にスカートを脱いだところで扉が開いた。
「あ」
「あ」
楔だった。
間が悪い。
僕の判断は早かった。
「WAWAWA忘れ物~」
脱ぎ捨てて遠くに行ったスカートを犠牲にしつつ、呆気にとられた楔の横を掻い潜ることを試みた。
「待ちなさい」
止められた。
そりゃそうだ。
「お風呂にはもう入ったの?」
「……はエス」
「二重肯定なんてして嘘を吐かないの。脱ぎ捨てたスカートを籠に入れていたのは見たのだから」
するりとメイド服を脱いでいく楔。
「少し、お話をしましょうか」
なぜこのタイミングで。
伊達眼鏡の奥の瞳が笑っていないのが気にかかった。
「ふぅ……」
結局僕の弱い抵抗空しく、服を脱がされずるずると一緒の湯船に浸かる羽目になった。
「意地悪そうにこっちを見ないでよ……」
「余裕が出てきたなあって」
「何に対してさ」
「女性にですよ」
にぃと笑う。
鋭い。いや、そんなこともないか。
「僕にかけられていた呪いの一つが女性に対する忌避感でしたので多少はそりゃ……まあねえ?」
「ふぅん」
意味深だ。
だが付き合っていられない。僕は湯船から上がる。
「早くない?」
「僕は鴉の行水ですから」
ゆっくり話す上でこの地形は僕に不利しか与えないので逃げるように髪を洗うことにした。
「つれないわね。別にとって食べはしないってのに」
「あのね、僕は男性ですよ?」
「だからこそ希少なんでしょうが」
演劇に活用されていた。
台本でも作るのだろうか。
「そういえばこの時期になると一、二年生の部活している生徒は応援の練習のため体育館に集まります。全校生徒の三から四割くらいかな?」
「待って、なにが言いたいの?」
「久しぶりに演劇しませんか?」
僕が病弱なら吐血していた。
替わりに僕は頭から泡を吐き出しつつ一言。