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小夜とは対象的に千華のカレーは色が辛そうに見えた。
「……辛くないの?」
「そこまでは辛くありませんよ?」
やや毒々しい色のしたルーを少しスプーンに乗せると僕に近寄せる。
「どうぞ?」
中々勇気のあることをする。
勿論、二重の意味で。
それを見ていたちいろが一言漏らす。
「周は……いや、良いか」
「待って、言いかけたのが気になるんだけど!」
大分危険なのではないだろうか。
それでもここで逃げては男が廃る。
僕は意を決して、口を開けて迎え入れる。
「デスソース……」
「んんっ!?」
都和がポツリと不吉な言葉を口ずさむがそこまでは辛くない。
いや、それでも辛い。
水でなんとか流し込むが、ひりひりする。
「ぐぅう」
「よく口から出さなかったな」
ちいろからはお褒めの言葉を授かる。
代償は大きい。
自分のカレーで口直しするも、味がわからなかった。
「千華はいつもこうなの?」
「美味しいですから」
食べる速度は他の人と変わらず、汗もあまりかいていない。
得意なのだろう。
僕は少しの後悔と共に千華の味覚を疑うのだった。
いや、辛さは痛みだから味覚ではないのだろうか。
とりあえず、僕は水をさらに口に流し込んだ。
「なにか甘いものでも持って来ましょうか?」
僕は楔の嬉しい申し出に黙って頷くのだった。