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女性としてはかなり大事な問題だった。
思わず閉口。
別に結婚するわけでもないのに。慕っているからといって、僕がどうにかする問題でもないのに。
「あ、でも解決方法があるな」
「……」
僕は思わず聞いてしまう。
「周が産めば良いんじゃないか?」
そして即座に後悔。
お前は何を言っているんだ。
「……僕は男です」
「今は女だろ」
にやり。いやらしい笑みだこと。
かき回して、性的にも性格的にもいやらしいから楔が苦手だと言っていたのを思い出す。僕も同感だと思う。
「んじゃあ、聞くけれど呪い自体はどうにかなるの?」
「そうだな。天想代力に極めて依存的だから天想代力が無くなればだな。天想代力に概念をぶつけて呪いを外すことは出来るが一時的だからなー」
「追いだすってこと? 追い出し方とかあるの?」
「なかなか、小夜にお熱かい?」
「茶化さないで」
「簡単に言うと、俺と小夜はもう無理だな。結び付けられ過ぎている」
「どういうこ……」
「元々の性格と天想代力性格が混ざった状態なんだよ」
「なに言っているんですか!!」
小夜が帰ってきた。
会計とトイレならそこまで時間がかからないか。
少し迂闊な話をしたかもしれない。
「周さん、帰りましょう。こんなやつ知りません!」
僕の手を引っ張り外へ。
まだ聞きたいことがあるのに玖乃との距離は離れて行く。
別れの挨拶も出来ないまま、僕らは大通りの方を歩く。
先程と違い、学生の数が増えてきている。
下校の時間にはなっているのか。
携帯で時間を見る暇もなく、ぐいぐいと引っ張られてコインパーキングに停まっていた車に乗せられた。
「……えっと、小夜さん?」
先程来たときの車ではない。運転手はいない。小夜の目の色が変わっている。
「……」
座席の後ろ、僕は押し倒される。
小夜は何も言わない。
五分経っても言わないので、僕は居心地の悪さを感じていたところで話が始まる。
「周さんって、全然動じない……」
なぜか非難された。
「だって、小夜は小夜だから」
抱きしめながら頭を撫でるとその好意をとてもいとおしそうに目を細めた。
「言いにくかったのに周さん全然気にしてくれないので悩んでいたのが馬鹿らしいです……」
「敵対したことと、子どもが出来ないことと、性格に天想代力が混ざっていること?」
こくんと頷かれる。
やや恥ずかしそうだ。
「これで隠しごとがなくなったので少し肩の荷が下りました。これで思う存分周さんにアピールできます!」
「今までもしていたくせに」
とは言わず、僕は曖昧に頷いておいた。