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絶句。
話し続けようとする小夜を一旦止める。
「……端原玖乃?」
「はい。そうですけれど?」
「中学の友達なんだけれど……」
「ひにゃ!?」
悪友で、女好きで、キザなやつは小夜の知り合いでした。
「なんでなんで!」
小夜は慌てている。
「なにかされなかった? なんにもされていないですよね?」
「別になんにもされなかったって」
好みから少し外れていたらしいからハグとか頬にキスぐらいだ。
そういえばお互いに三十までに一人身だったら一緒に住もうなんて話をしたっけ。
僕はどう返したか。覚えていない。
「中学卒業してから連絡してなかったけれども」
僕は携帯の連絡先を小夜に提示する。
「……」
黙って僕の携帯を奪うと、そのまま電話を始めた。
目の色が変わっているので止めることは出来ない。
「もしもし、私です。小夜です…………とぼけないで下さい。色々聞きたい話がありますが何をしているんですか? 私を敵に回したいんですか? あのとき別れるときに言いましたよね。周さんにちょっかいを出したら殺すって。言い訳はいりません……なっ!?」
僕を見ている。
「なに?」
「一緒に寝たって!」
「……雑魚寝したときの話? 近くにはいたけれども横にいたって程じゃ」
小夜は小さく意味深に頷くとまた電話に戻る。
「ちょっと来て下さい。部活? そんなの良いでしょうが。とにかく来ないとすりつぶしますからね」
怖かった。
まあ、体躯的には怖くはないのだが。
「……」
黙って僕に抱きつく。
嫉妬心が強い。
「……病みそうだな」
「い、いにゃ。だって、ほら私って心配症ですから……周さんが応えてくれない限りは駄目かもしれません……」
「僕に……」
期待しても応えられない。
いや、そんなこともないのだろうか。
よくわからなくなってきてしまった。
小夜に首を傾げられるが曖昧にしてしまった。
「別に私は……二番目でも良いんですよ? ただ、ずっと一緒に入られれば」
「小夜、重いって」
「だって、私の呪いは……あか」
「おっす!」
玖乃参上。
お早いお付きで。
目が細く、締まりの悪い笑みを常に展開しているような狐みたいなやつだ。
背恰好は僕と変わらない。
「よう、あまねー。元気か?」
僕に抱きついている小夜をまるでいないかのように自然な足運びで僕の頬にキスをした。
まるで欧米の挨拶のような振る舞いに。
「この……!」
小夜が切れた。
店内に一瞬に糸を張り巡らし、包囲網を狭める。
「おっと」
しかし、糸は玖乃を捉えきれない。
続けて、小夜は僕から離れて糸で横薙ぎするが壁に痕が残るだけで玖乃には当たらなかった。
「殲滅系にするにしては場所がネックだぞっと」
玖乃は回避をしたその後天井を蹴り、一瞬で小夜を補足した。
「よいしょ」
そして、キス。
「ひぃああああああああああ!?」
「コラコラ……」
僕が止める羽目になった。
「おっ!」
嬉しそうな反応をされた。
「戻ったのか!」