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「?」
よくわかっていない様子だった。
結局、朝は時間がなくて千華にも小夜と話すこともなく昼休みを迎えた。
いくらか顔見知りは出来て、食事も誘われているが友達は作らない。
長くても二週間だと思うと、作る気にはなれないし作る意味はない。
都和とは違うクラスだから話すことは少ない。代わりにちいろと同じクラスだが、彼女は彼女で防御壁を貼らないといけないので話せない。変にファンクラブ(元だろうけれども)の人を刺激するのも好ましくないし。
昼御飯がないので購買に行って適当なパンでも買おうと思い、クラスから出たところで服の端を掴まれた。
「……」
小夜だった。
手元にはお弁当が二つ。朝に渡さなかった理由はどうも一緒に食べたかったからのようだ。
何も言わずに僕を引っ張っていく。
下級生のところに上級生が来ているというのに、廊下に点在する女生徒は会話に夢中であまり多くの人が小夜に気付いていない様子だった。
階を移り、廊下の奥の部屋。
図書準備室と書かれている部屋に入れられた。
図書準備室と言う割には本が少なく、代わりにテーブルと椅子が四脚置いてあった。
「……リバース」
深呼吸一つすると僕の方に向き直し、テーブルの上にお弁当を置いてから無垢な笑顔で抱きつこうとする。
僕はそれを受け入れた。別に断ることもない。
「えへへへ」
嬉しそうである。
気にせず尋ねる。
「ここ使って良いの?」
「私の友達が文芸同好会でしているところなので大丈夫なんです」
大丈夫らしい。
何か小夜の方から口を開けるのを待ったが、たっぷり十五秒経っても動きがなかったので質問してみた。
「お昼ごはん作って来てくれたの?」
「周さんと食べたくて!」
ありがたいことだ。
あんまりお金がないので数日過ぎたら寮の食物を持っていくような生活をするところだった。それに小夜のご飯も美味しかったので嬉しいものだ。