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「つれないなー」
それにしても都和はノー天気だ。
「僕がこんなに苦労しているのに……」
「金なら払う!」
「これだから金持ちは!」
苦労した内容については勿論言わないけれど。
寝るには早いが、今日も疲れたので早めに寝て体力を回復させよう。
本当は違うところで寝た方が良いかと思ったが、もう反転の方が来るとは思えないので今日のところはまた都和のところで寝るとしよう。
寝る準備をしていると、寝息が聞こえた。
「本当に僕って男扱いされない……」
良いけれども。
別に良いけれども。
慣れているし。
携帯を確認すると家族からメールが来ていたので適当に返しておいた。妹がかなり心配しているのが、文面から伝わるがまだ帰れない。
お金もないし。
「おっと?」
変なメールが届いていた。
迷惑メールかと思ったが、どうも違うらしい。
内容はシンプルでこう書いてある。
天想代力の人格について。彼らはお酒を好むので飲まないこと。
「忠告痛み入るが……遅いよ」
活かされない。
五秒ルールに関しても現在活用できていない。目の色が変わる前兆を見つけなくては到底逃げられないし。
「続きがあるのか」
人格が能力を持つ。そのため、人格がいないときは能力を扱えない。
七海周には現在人格がいないために概念は扱えない。
七海周にはマーキングできない。
七海周の概念は再現性であったが、現在どこにも確認されていない。
「……」
情報は助かるが、出元が不明なため不気味だ。
小夜が言うには僕の記憶は封じられていて、封じられている中に僕が天想代力を使っていた時期があるのだ。
人格を消す。または、人格を他に移す方法があるというのなら小夜に十年前について重々聞かなければいけないか。
とりあえず、千華と小夜には会わなくては。
「今は……頭をからっぽにして寝よう」
僕は出元不明なメールに対して、感謝と情報提供を呼びかける返信をしてから寝ることにした。
都和は真ん中に寝ているので、少しずらす。
重たいものを運ぶときのこつは一つ、身体の遠くではなく近くで物を持つ。
「よいしょっと……」
その結果、抱きつくような形になっているがやましいことはないのでセーフにしていただきたい。
「んん……」
「横に行ってね」
幸い都和は起きなかった。
僕は都和の隣に寝転ぶ。
やや場所はせまいが寝苦しい程ではない。