11
「はい、おかえりなさい。こちらの方が新しく入る転入生ですね」
「うん、七海周って言うんだ」
白々しいが、僕は楔に追随して小さく頭を下げた。今はまだばらす気はないのならば、それはそれで良い。後が怖いけれども。
戦友、萩野楔。
中学校時代に演劇部の原型を立ち上げた一人で僕は彼女に強引に巻き込まれた。巻き込んだ理由は彼女が言うには僕が才能の持ち腐れをしていることにイラついてとのこと。演劇部といっても人が少なく、活動内容も演劇部の枠を超えていた。していた内容自体は割愛させて頂くが中学校の七不思議が少なくとも三つ増えたとのこと。
「立ち話もなんなんで中に行きましょうか」
楔に促されて中へ。薄く茶色の入った眼鏡で少しは優しく見えるが観察力に優れた鋭い目は僕の心境を覗いているようだった。
「厄介この上なし……」
聞かれないような小声でぼやく。体力がさらに減少。サクセスなら死んでいるところだ。
寮の中は金持ちの特権なのか、はてさて一番客が出入りするためかはわからないが玄関は吹き抜けのエントランスになっているため異様に広い。壁にはタペストリーや有名であろう絵画が貼付され、豪華な台座の上にはこれまた豪奢な壺が置かれている。さらに、半端な客人は中に入れまいとするためか右側にはソファーとクリアテーブルが置かれている。もしかしてと上を見上げるとやはり高い位置にシャンデリアが吊られており僕は思わず感心した。
「うん、金持ち怖い」
「割ったらわかるよな?」
わかりたくはない。




