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 言い放つと、顔を寄せてきた。

「……あ、あれ?」

 押し返せた。抵抗出来てしまったのだった。

 再度顔を近寄ろうとするが、僕が姫城さんの両肩を持つだけで行動権を奪えてしまった。

「おい、なんの真似だ?」

 すごまれても姫城さんの威圧感はなく、子どもが叫んでいるように思えた。

 立ち振る舞い、雰囲気で印象は変わるものだな。気品はお金で買えないとはよく言ったものだ。

「えい!」

 身体を起こしくるっと回転させ、僕の膝の間に座らせる。

 抵抗することなく彼女は為すがままに動いてくれた。

 姿勢は変わったがゼロ距離なのは変わらず。柔らかさが伝わってきてとてつもなく気恥ずかしいがその感情をなんとか処理しつつ、僕は話をすることになった。

「俺様は強要したつもりなんだが」

 後ろ向きに睨んできたが、僕は軽く無視する。

「さて」

 なんだろうこの状況は。

 戦闘する気はなさそうだが、僕が欲しいとはどういう意味なんだか。

「……お名前は?」

「俺様に名前は無い。なんとでも呼ぶが良い」

 こだわりはないのか。

 確かに他の天想代力の人(人なのだろうか)を見ても裏千華だったり、名乗ってもらってなかったりする。

 名前が全員ないのか?

 まあ、三人目なのでそこのところがどうなのか言いきれないが。

「僕は君としか言わないよ?」

「良いぜ。俺様はキミだな」

 そういう意味ではない。

 訂正するのも何なので続けることにした。

「キミの目的は?」

「俺様? 好きなものを好きなだけ食べて、欲しいものは欲しいだけ手に入れるだけだ」

 粗暴な考えだ。昔の漫画の不良か。

 というよりも子どもなのか。

「あはは、だから、俺様はお前を手に入れる!」

 論理展開も早い。

「僕を手に入れるとして……僕で何がしたいの?」

「女を手に入れたらわかるだろうが。押し倒して声を聞くんだよ。よろこばせてやるよ」

 えろいことかと思ったら、手をわきわきし始めた。

 こいつまさか、笑い声を聞きたいのか。

 勘違いした僕がまさか恥ずかしくなってしまった。

「不思議だな」

「なにがさ?」

「いや、俺様に対して会話を選ぶってことさ」

 今のままでは勝てないので単純に戦いの引き延ばしのつもりなんだが、評価されてしまった。

 戦いにならないのならば、こうして拘束する意味はなさそうだ。

 勿論、やましい気持ちでずっと膝の間に座らせていたわけではない。拘束していた意味は今回は力勝負では勝てそうだからである。

「そろそろ離れてくれる?」

「あ、馬鹿野郎が! もう少し、柔らかさを堪能させろ」

 お湯をかけられる。なぜか拒否られた。

 中身男なんじゃないだろうか。

 僕も中身は男なんだが。

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