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それはともかく、このまま朝まで小夜がぐっすりならばここで寝るのも安全かもしれない。
抱き枕があるのでスペースも区切りやすい。
問題は一つ、小夜が起きたときである。
「何もしないとは思うけれども」
まあ、考えていても仕方がない。
「……それにしても幸せそうだな」
小夜の期待が大きすぎてつぶれそうなことに気付いて欲しいのだが。
僕は小夜の寝顔を堪能してから、部屋を抜け出た。
わかりやすいところに鍵があったので念のため鍵を閉めてから僕はお風呂に向かう。
当然、一人湯目当てだ。
脱衣所には誰もいない。
浴室をみても誰もいない。
完全勝利。
「昨日は堪能出来なかったので今日はゆっくり入らせてもらいます」
本当はお酒を飲んだ後は入ってはいけないのだが、水分を沢山飲んでおくので許してもらいたい。
「よいしょっと」
ぱぱっと脱ぎ捨て、浴室へ。
すぐに湯船につかりたい衝動を抑えて僕はまず保身に入る。
シャンプーシャンプーリンスコンディショナー。
頭に塗りたくるように付け、流していく。これで仮にちいろが入って来ても昨日の展開にはならないだろう。
「身体も念入りに洗っておこう……」
トラウマが僕の行動を縛るのだった。
いざ、湯船に入ったときにはピカピカで隙を生じないように出来ていた。
「ふぁー……」
湯船に肩まで浸かると、吐息と一緒に疲労が抜け出るようだ。
やはり、お風呂は良い。心が洗われるようだ。
なんて思っていると浴室の扉が開いた。
咄嗟に身構えるが、入ってきたのはちいろでなかったので一息吐く。どれだけ僕は怯えているのだろうか。