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目が据わっている。
少し怖い。
じりじりと近寄ってきた。
その足はやはりふらついている。
「あんまり悪ふざけが過ぎるようなら僕にも考えがあります」
僕は少し、逃げ方を変えてみた。
「どうするつもりですか?」
不敵に笑う小夜。僕は意地悪な表情を浮かべながらあえて近寄る。小夜は受け入れたのかと勘違いしたところで僕は耳元で呟く。
「小夜なんて嫌いです」
「……くっ」
予想外のダメージだったのか、腰が抜けたのかのように膝から崩れ落ちる。
そして、僕の目を潤んだ表情で見ている。
「え、あ……」
力なく手を伸ばす。
僕はそれを掴んであげた。
「今は好きな方だよ?」
少なくとも友達以上だとは思う。
「周さーん!」
これはまるで洗脳では。いや、深くは考えない。
僕は雑に頭を撫でてから、立たせて一緒にベッドに座る。
じーっと僕を見つめてくる小夜に少しだけガス抜きさせてあげることにした。
「目を閉じて」
「ん!」
唇を突き出し、目を閉じる。
「……んー」
キスだけど。場所はそこではない。
僕は特に悩まずに、頬にキスをした。
事故は怖いので今回は僕は色気のかけらもなく手で軽く顎を抑えての頬のキス。それはただ、唇が頬にぶつかっただけのものであるが小夜的には結構嬉しかったようだ。
「えへへー……」
なんとなくコントロール方法がわかった気がするが、あまり使いたくない方法だなと思った。
少し、小夜に話をしようかと思ったが酒が入っていることと夢見心地な気分で真面目な話をしても進まないので僕は飲み込んでおいた。
代わりに思いつく。
みんながお酒を飲んでいるのなら、お風呂が貸し切りだということに。
「周さん、ぎゅってするのは良いです?」
「さっきしたでしょうが」