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 都和は僕を置いて小走りで寮へと向かった。一方距離があるように見えた僕は歩いて向かう。すでに学園生活をしてきた僕に走る元気は枯渇している。供給源は自宅なのだが、本日は非常用でことを済ませる他になし。

「張り合いがない!」

 外部の侵入を許さない鉄柵の内部で都和にそんなことを言われた。とりあえず、僕は都和へのネガティブな感情を置いておき、目の前の寮に感嘆する。近くで見るとさらに大きいのがわかる。洋館を見るのは少しだけ役得だ。住むところとしてはプラスではないけれども。もしかして推理小説のような殺人事件が起きるタイプの館なのではとくだらないことに思慮していると。

「おかえりなさい」

 メイド服を着た女性が庭から出迎えてくれた。時代錯誤も甚だしい黒を基調としたヴィクトリア朝時代のものだ。

「どうも……」

 視線を上に向けると、そこには柔らかい笑みを浮かべた戦友がいた。

「……っ」

 思わず絶句。

 屏風の虎退治を頼まれた一休さんのように無理難題を押し付けられても普段ならばポーカーフェイスを一切崩さない自信があったがここで一部訂正させて頂きます。

 感情の整理や後回しが上手な僕でもさすがにこの展開は固まる。パソコンであればボタンを押して無理やり再起動出来るものの、僕に出来るのは苦笑いだけである。

「ただいまー、楔」

 他人の空似や血縁関係という一縷いちるの希望は僕の横にいた都和が断ち切ってしまった。切断箇所は修復不能なり。

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