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自身の嫌いなことの一つに女性に間違われるということがある。往々にして僕が原因だが、疑いもせずアホな顔をして性別を誤るなど人として最悪である。本質を見抜く努力を怠り、外見だけで簡単に人を値踏みする社会が悪いなんて大層なことまで考えたことがあるがそこまで大事になっては毒しか吐けない。しかし、長い髪を面倒がって切らなかった僕の方にも非はあると多少は認めよう。髪質は妹が無駄に頑張って良いのは認めるし、顔のつくりが女の子に近いのも否めない。一応筋肉を付けるなど努力はしていたが、皮肉にも嫌えば嫌うほど近づいてしまうとは夢にも思わなかった。
噂をすれば影が差すではないが……数日経った今でもまだ慣れない。
そう、七海周(ななみあまねと言う。名前まで女の子みたいでつらい)こと僕はゴールデンウィーク中に女の子になってしまった。
「……」
自己確認終了。考えるだけで鬱になってしまうが、目の前の非現実からは逃れられなくて、仕方なく立ち向かうしか出来ない。逃げていてもこの問題は解決しない。不幸中の幸いながらまだ僕には戻れる可能性がある(らしい)からだ。
「……だからって」
女性になってしまったからといって、姫小百合女学園に編入する意味が未だにわかっていない。
ちなみに今日が転入初日で、すでに高校二年生になって一か月以上経っていることを考慮すればすごく不自然なタイミングだ。なので、女生徒から奇異な視線を送られてしまった僕は帰りたい気持ち一色に染め上げられてしまった。無論、足の先から頭のてっぺんまで。