オリンピック水泳選手のトイレ事情
4年前のオリンピック
沖多佳子は悔しさしかなかった。
400m決勝で沖は世界新で金メダル!!のはずだった。
タイムはそれまでの世界記録より0.5秒もはやかった。
しかし、スイスのハーレーン選手が沖より0.03秒速く、金メダルを奪われてしまったのだ。
しかもハーレーンは
「頭が痛くて(コンディションは)最高ではない」と挑発していたのだ。
それから4年後、
沖は400m決勝にいた。
ハーレーンは1コース
沖は4コースだ。
今までの4年間はハーレーンに勝つことばかり考えていた。
が、今は別のものに勝つことばかり考えている。
別のもの?それは他でもない…便意だ。
お腹の痛みというより肛門への圧力だ。
沖は毎朝、お通じが来るタイプだった。
この400m決勝は現地時間20時からだが、
日本時間では7時だった。
沖はこの時間にいつも通り便意を感じたのだった。
(トイレ行ったほうがいいかな?)
開始まで残り2分だ。もう行けないのは目に見えている。
ふと沖の頭をよぎったのは、同じ実業団の三城だった。
三城は下痢でプールに入り、案の定決壊したのだ。
その時プールは茶色くなり2日はプールが使用禁止になったのだ。
そんなことを考えているうちに皆が位置についた。
スタートの合図とともにプールに飛び込んだ。意外に冷たい。冷たさに驚いて水中で小用をたすことになってしまった。しかし便意は消えない。
小便を撒き散らしながら泳ぎ、あと1往復といったとき、お尻が少し暖かくなっていくのがわかった。
なんとかやけくそに泳ぎきり、順位をみると1だった。あとから聞いたが、それはハーレーンより0.8秒速く、世界新だった。
プールからあがると、誰一人として臭いというアピールをしなかった。
(気付かれてないのかな)
日の丸を背負って観客席の前をぐるりと一周して控え室にむかった。
沖はトイレに入ると正面の全身鏡でお尻をみた。少し膨らんでいたが、言われるまで漏らしたと分からないぐらいだった。
~オリンピック閉幕から1週間~
いつもどおりジムから車で帰った。
家に着くと記者が待ち構えていた。
コーチはオリンピックで有名になったら家に記者がくると話していたのでさほどおかしく感じなかった。
記者はありがちな質問を多数してきた。その中にこの質問はあった。
記者「沖選手、ハーレーン選手に雪辱を果たしてスッキリしましたか?」
沖「はい、スッキリしました。」
まさかこれがその年最大のスキャンダルになるとは…。
~3日後~
何気なくテレビをつけるとちょうどニュースの「芸能とスポーツ」というコーナーだった。
「今日のトップニュースは~」
芸能コメンテーターが楽しそうにこう言った。
「競泳沖多佳子選手、やはり漏らしていた!」
スタジオ一同「やっぱり」
沖「そ、そんな…」
「昨日発売の週刊道角デーによると、沖選手は『スッキリした』と遠回しに話したという。これはすべてのスポーツ新聞のトップ記事です。」
スタジオ一同 爆笑を超えた大爆笑
「写真を見てください。ほら、ここ、ここ!
お尻が膨らんでいるでしょう!大人がうんちをブリッブリッと漏らしてますよ!さらに、よく見てください!沖選手の後ろ、黄色い線が!これ絶対おしっこですよねぇ!」
スタジオの女優A「キモすぎ!同じ女として恥ずかしいんだけど~。ないわ~。」
沖の目から涙がこぼれ落ちた。