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『転校生』というワードでSNSに検索をかけ、色々な投稿を見ていたが、ふと、急に読み込まなくなって、わたしは指を止める。スマホの電波を確認すれば、『通信がありません』とネットワークが切れている警告が、スマホの画面上部に流れていた。
十七年も生きていれば、電車に乗ることは何度もあったけれど、こうして車内で電波が途絶えることは初めてだった。電車の窓から外を見れば、随分と木が並んでいる。しかも平面ではなく、斜面。スマホにばかり視線を向けていて気が付かなかったが、山の中を走っているらしい。
わたしはスマホをいじるのを諦めて、カバンに入れる。ぼーっと外を見ていれば、木々がなくなった途端、今度は田んぼがずらりと広がっている光景に切り替わった。田植えの準備をしているのか、うっすらと水が張ってある。
田んぼの間に伸びる道路はアスファルトだし、電柱が等間隔にあるしで、絵に描いたような田舎、というほどではなかったけれど、わたしが以前まで住んでいた都市に比べれば、田舎だとは思う。
ゴールデンウィークの引っ越し。こんな中途半端な時期になってしまったのは、ひとえに両親の離婚が原因だった。
一年ほど前に家を出て行ったきり、行方が分からなかった母親をようやく見つけ出した父親が、つい先日離婚を成立させたのである。親権は当然父の方に行ったけれど、仕事が忙しくなるという理由で、わたしは父方の祖父母を頼らざるを得なくなってしまった。
母を探す上にわたしの面倒を見る一年を過ごしていた父は、仕事の方で結構周囲に協力をしていてもらったようで、離婚が成立したのなら、と、以前の仕事量に戻されることになってしまったのだとか。
流石に会社に泊まり込むようになるようなことにはならないが、年頃の娘を夜遅くまで家に一人にしておくのは不安だし、来年は大学受験を控えているのに家事をほとんど任せる形になってしまうのはまずい、とか。そんなことを言って、父は、わたしを祖父母に預けることを決めたらしい。
……まあ、多分、それだけが理由じゃないだろうけど――。
ゴォ、と電車が走る音が変わる。トンネルに入ってしまい、窓の外を眺めても、暗闇が広がるだけで、見るようなものは何もなくなってしまった。田舎風景が見ていて楽しいものだったか、と言われると微妙だけど。
トンネル内を走っていたのも、ほんの、二、三秒。
『まもなく、代古、代古。お出口は左側です』
トンネルを出たかと思うと、すぐに下りる駅の名前のアナウンスが入る。
わたしは膝にのせていた鞄を持ち、立ち上がる。元々、車内に乗客がほとんどいなかったが、ここで降りるのはわたしだけらしい。
ホームに降りると、線路わきに随分と古びた看板に描かれた、和服を着た人形と目が合った。
『身代わり人形の地・代古』
「……身代わり人形?」
随分と古びた、昔からあるような看板でありながら、前に来たときには見かけなかったような気がして、思わずそれをまじまじと見てしまう。人形になんて興味がないから、見逃していたのだろうか。
――ピリリ! ピリリリ!
「やばっ!」
バスの時刻に合わせてセットした、スマホのアラームが鳴り、わたしは弾かれるようにして駅のホームを後にした。




