第八話:スカウト?。招かれざる称賛
視界いっぱいに、黄金色の文字が躍る。
『VICTORY !! —— 1st PLACE』
その文字を見た瞬間、私の全身から力が抜け、その場にへなへなと座り込んでしまった。
「……あはは。本当に、一位になっちゃった」
「お疲れ様、アダダ。素晴らしい立ち回りだったよ」
クロが隣で、穏やかな、けれど誇らしげな笑みを浮かべている。
目の前にリザルト画面が表示され、報酬の精算が始まった。
『優勝報酬:5ダイヤを付与します』
掌の上に、昨日よりもずっと大きな、眩い輝きを放つ結晶が転がり込んできた。
【現在の所持ダイヤ:5】
(昨日は三位で1ダイヤ。一位は一気に5個ももらえるんだ……!)
この石があれば、またあのドキドキするガチャを回せる。
でも、今はそれ以上に、自分の力で掴み取った「勝利」の余韻が、何よりも甘美な報酬だった。
ホームタウンの帰還広場に戻ると、いつも以上の熱気が私たちを包んだ。
広場の中央にある巨大なホログラム掲示板には、直近のマッチング結果がリアルタイムで更新されている。
『天空遺構マッチ:優勝——アダダ、クロ、他2名』
「あ、見てクロ! 私たちの名前が出てる!」
「本当だね。この掲示板は全プレイヤーが見るから、少しは有名になったかもしれないよ」
通り過ぎるプレイヤーたちが、掲示板と私を交互に見ながら「あのブルーガンの子か」「最後のアクロバティックな連射、見たか?」と囁き合っているのが聞こえる。
少しだけ恥ずかしくて、でも鼻が高い。
そんな時だった。
「——おい! お前だろ、さっきの青い銃!」
背後から、鼓膜を震わせるような野太い声が飛んできた。
振り返ると、そこには燃えるような赤髪を短く刈り込んだ、体格の良い男が立っていた。
鋭い眼光。装備は使い込まれた無骨な近接武器とショットガン。
「……えっと、あなたは?」
「俺か? 俺はアッシュだ! さっきの天空遺構で、最後にテメェにブチ抜かれた男だよ!」
アッシュと名乗った男は、悔しそうに顔を歪めながらも、その瞳には不思議な熱が宿っていた。
(……あ。思い出した。最後の一チーム、遮蔽物も何もない鎖の上を、野性の獣みたいに駆け抜けてきた人だ)
あの時、私は「なんて上手い人なんだろう」と驚いた。
理屈も作戦も無視して、ただ純粋な「本能」だけでこちらの死角を突いてきた、あの恐るべき瞬発力。
「……あ、やっぱり。最後、すごく速かったからびっくりしました」
「ふん、褒めても何も出ねぇぞ! まったく、あんな高低差を無視した動きされちゃ、俺の勘も狂うってんだ。……なぁ、銀髪。あんたもそう思うだろ?」
アッシュに話を振られたクロは、冷静に彼を観察してから口を開いた。
「……ああ。正直、どっちが勝ってもおかしくなかった。最後は人数の差で僕たちが押し切ったけど、個人の技量だけなら君の方が上だったかもしれない」
「だろ!? なあ、あんた分かってるじゃねぇか!」
アッシュはガハハと豪快に笑い、私の肩をバシバシと叩いた。
「決めたぜ! テメェら、面白い! 次のマッチ、俺も混ぜろ!」
「えっ? 一緒に……ですか?」
「おうよ! 俺は作戦とか難しいことは分からねぇが、敵をブチのめすことに関しては右に出る奴はいねぇ。テメェらの腕と俺のパワーがあれば、連勝間違いなしだ!」
あまりにも強引で、無鉄砲。
でも、彼の真っ直ぐな瞳からは、裏表のない「熱さ」が伝わってきた。
私はクロと顔を見合わせた。クロは少し困ったように肩をすくめたが、その目は「悪くない」と言っている。
「……わかった。よろしくお願いします、アッシュ!」
「よっしゃ、決まりだ! 最高の暴れ場を期待してるぜ!」
こうして、私たちは予想だにしない三人目の仲間を得ることになった。
冷静な司令塔のクロ。
縦横無尽に駆ける私。
そして、圧倒的な本能を持つアッシュ。
「いくぜ、! 派手にやってやろうじゃねぇか!」
三人での初マッチング。
ゲートが光り輝き、新しい戦場へのカウントダウンが始まった。




