第七話:青き閃光。新しい私
視界が、一気に加速する。
転送ポータルを抜けた先、私の足が着地したのは、苔むした巨大な石柱が乱立する「天空遺構」エリアだった。
眼下に広がるのは、雲海。
足場は浮遊する岩島と、それらを繋ぐ心許ない鉄の鎖。
「……すごい。今度は、高低差が激しいマップだね」
「ああ。ここなら、僕の新しいアクセサリーと、君の武器の相性を試すのにうってつけだ」
隣に立つクロが、耳元のイヤーカフを指先で弾いた。
銀色の光が小さく瞬く。彼もまた、新たな力を手にした高揚感をその瞳に宿していた。
私は、腰のホルスターから『コバルト・ストリーム』を抜き放った。
(……軽い。それに、手に吸い付くみたいに馴染む……)
初期装備の銃とは、持った瞬間の重心のバランスからして全く違っていた。
「マッチング完了。……アダダ、来るよ」
クロの警告と同時に、前方、二つ先の浮遊島から銃撃の閃光が走った。
――ガガガガガッ!
「っ……、右に散るよ!」
私は反射的に地を蹴った。その瞬間、信じられない感覚が全身を突き抜ける。
(走れる……! 昨日の、あの重苦しい感覚が全然ない!)
『走破力消費軽減』。その恩恵は劇的だった。
いつもならすぐに点滅を始めるゲージが、今はまだ余裕を持って青く輝いている。
私は飛沫を上げるように、島から島へと飛び移る。
「アダダ、そのまま引き付けて! 僕が上を取る!」
クロが力強く踏み切った
クロが上空から援護射撃を開始する。敵チームは、予想外の上からの攻撃に混乱し、遮蔽物の裏で右往左往していた。
今だ。
私は走りながら、コバルト・ストリームのトリガーを引いた。
――シュパパパパパンッ!
放たれた弾丸は、ただの光弾ではなかった。
空気を切り裂くたびに、サファイアブルーの残光が軌跡を描く。
「……速いっ!」
弾速、そして連射性能。すべてが初期武器を凌駕していた。
私が狙いを定めた場所へ、糸を引くような正確さで青い閃光が突き刺さる。
「……あ、当たった……!」
一瞬で敵のHPが削れ、光の粒子へと変わっていく。
これだ。これが、店長の言っていた「止まらない」ための、そして「勝ち抜く」ための力。
私は、自分がニヤけているのを自覚した。
嬉しくて、楽しくて、戦場という過酷な場所のはずなのに、私は今、かつてないほどの全能感に包まれていた。
「アダダ、油断しないで! 別の反応がある、四時の方角だ!」
クロの声で、私はハッと我に返った。
舞うように移動する私たちを、虎視眈々と狙う新たな影。
けれど、今の私には恐れなんてなかった。
「大丈夫。……今の私なら、どこまでだって行けるから!」
私は再び、青き閃光となって空を駆けた。
激闘の末。
私たちが最後に立っていたのは、マップの最高点にある「黄金の祭壇」の上だった。
結果は……「第一位」。
「……やった。……やったよ、クロ!」
「……ああ。おめでとう、アダダ。最高の試合だったね」
クロが地上に降り立ち、私と拳を合わせた。
初めての一位。初めての、勝利の味。
私はその喜びに身を委ねながら、静かに銃を収めた。
今の私には、この勝利の熱さだけが、真実だった。




