第四十八話:境界線の崩壊と119の沈黙
◇現実世界
無機質な電子音が、リビングの静寂を切り裂いた。
テレビ画面の上部に赤と白の帯が表示され、『ニュース速報』の文字が点滅する。
「番組の途中ですが、**『Legacy Online』**についての速報です」
深刻な面持ちのアナウンサーが、原稿を読み上げる。その声は震えを押し殺しているように聞こえた。
「去る11月11日に発売され、世界的なブームを巻き起こしているVRMMORPG『Legacy Online』。
先日、プレイ中のユーザーから初の死者が出たとの報道があり、原因究明が急がれておりました」
画面が切り替わる。
映し出されたのは、『Legacy Online』のプロモーション映像だ。
広大な荒野、近未来的な都市、そして銃を携えたキャラクターたちが並ぶ。
だが、その映像は戦闘シーンなどの激しいものではなく、静かなフィールド風景やタイトルロゴが映るだけの、刺激の少ないものが選ばれていた。
「死者が出たその後も断続的に被害者が確認され、一層世間を騒がせているこのゲーム。
今日未明、深夜1時から今朝9時にかけて、約半日のうちに新たな犠牲者が一斉に発生しました」
画面右上の小窓に、被害状況を示す日本地図とグラフが表示される。
そのグラフは、深夜帯から朝にかけて異常な角度で跳ね上がっていた。
「警察および医療機関からの情報によりますと、先日の事件を受け、病院にてモニターチェックや身体の保護を受けていたプレイヤーたちが、
プレイ中に突如として心停止を起こし、その後死亡が確認されたケースが相次いでいます。
その数は……」
プロモーション映像がフェードアウトし、無機質な背景と共に、巨大な数字だけが画面中央に静かに、しかし冷酷に表示された。
【死亡者数:119名を確認】
「現在までに、119名の死亡が確認されました」
アナウンサーの声が重く響く。
たった一晩。わずか8時間足らずの間に起きた、未曾有の惨劇。
厳重な医療管理下にあったはずの彼らでさえ、死の運命からは逃れられなかったのだ。
仮想の向こうのプレイヤーたちは知る由もない。
それは、ゲームの中で「敗北」し、二度と戻ることのなかったプレイヤーたちの数。
そしてそれは、ブローキンが一晩中、狂ったように積み上げた狂宴の結果が反映されていた。




